ナビ派

ナビ派について

ナビ派（Les Nabis）は、19世紀末のパリで活動した前衛的な芸術家たちのグループで、その名前はヘブライ語で「預言者」を意味します。彼らは、印象派とは異なり、自然の光の表現よりも画面自体の秩序や神秘性を重視しました。

ナビ派の誕生

ナビ派の始まりは、1888年に遡ります。この年、ポール・セリュジエはアカデミー・ジュリアンでの学生生活を送りながら、ブルターニュを訪れました。そこで彼はポール・ゴーギャンから影響を受けました。ゴーギャンとの森の写生中、彼はセリュジエに対して色彩の大胆な使用を教え、「樹はどんな色に見えるか？」と問いかけました。この衝撃的なアドバイスは、セリュジエに新たな表現の方法をもたらし、帰京後には仲間たちとその思想を共有しました。

その結果、ピエール・ボナール、エドゥアール・ヴュイヤール、モーリス・ドニ、ポール・ランソンといった仲間たちが集まり、ナビ派が結成されました。やがて、ゴーギャンの友人であるアリスティド・マイヨールやオランダ出身のヤン・ヴェルカーデ、スイスのフェリックス・ヴァロットンなども参加し、グループは拡大しました。彼らは土曜日ごとにランソンの家に集まり、芸術について議論や批評を行い、独自のチェアや制服を整えることでその絆を深めていきました。

ナビ派の特徴

ナビ派は印象派への反発として、その美術観を確立しました。彼らは自然の光を捉えることよりも、画面上の要素それ自体の調和や美を追求しました。特に、理論家として知られたモーリス・ドニは、「絵画は物を表現するものではなく、それ自体が秩序と美を持つもの」と語り、その姿勢がナビ派の特徴となりました。

ボナールもまた、自身の作品においてこの考え方を体現し、ナビ派が写実主義の主張を否定し、神秘的な表現を行うことの重要性を強調しました。彼らの思想の根底には、オディロン・ルドンやジョルジュ・スーラといったポスト印象派の影響もありました。このように、ナビ派の作品は、自らの見解や感情を色彩や形で直接表現することを志向したのです。

また、日本の浮世絵版画の影響を受けた彼らは、二次元の平面における線の要素を強調し、何も描かれていない空白の部分にも意識的に意味を持たせることに注力しました。これにより、観る者に新たな視点と思索を促すような作品が生み出されました。

結び

ナビ派の名称に示される通り、彼らの多くは熱心なカトリック信徒で、中世の神秘主義を継承していました。特にセリュジエは、神の数の神秘に関心を抱いており、信仰と芸術を融合させる道を追求しました。ナビ派は、単なる美術運動を超え、当時の芸術界において重要な役割を果たしました。彼らの作品は今もなお、多くの人々に影響を与え続けています。

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