シャルロ

シャルロ（Charlot）は、中世フランス文学、特にシャルルマーニュ（カール大帝）とその宮廷を舞台にした武勲詩や物語群に登場する人物です。彼はしばしばカール大帝の息子として描かれますが、その扱いは父の偉大さとは対照的に、物語の展開における悪役、あるいは主要人物に苦難をもたらす存在として位置づけられています。父であるカール大帝の盲目的な愛情を背景に、その身分を笠に着て傲慢かつ専横な振る舞いを繰り返し、王国内の多くの有能な騎士や臣下との間に深刻な対立や悲劇を引き起こしました。その行動は王国に不和と混乱の種を撒き散らす結果を招き、カール大帝が高齢を理由に退位し、シャルロに王位を譲ろうとした際には、臣下たちが一斉に反対するほどでした。

史実のモデルに関する説

シャルロという人物像には、実在の人物がモデルとなったという説が存在します。最も有力視されるのは、カール大帝の実子である若カール（Charles the Younger）の存在です。また、カール大帝の孫にあたる幼児シャルル（Charles the Child）も、物語におけるシャルロの悲劇的な最期と類似点があることから、モデルの一人として挙げられることがあります。

主要な確執のエピソード

シャルロは、物語の中で幾度となく英雄たちと対立し、その悪行によって重要な物語上の出来事を引き起こします。

ルノー・ド・モルトヴァンとの対立: 有名な騎士ルノー・ド・モルトヴァン、特に四人のエイモン兄弟の物語において、シャルロは中心的な敵対者として描かれます。シャルロはルノーの愛馬、魔法の馬バヤールを強く所望しますが、ルノーがこれを拒否したことで関係が悪化。カール大帝が息子であるシャルロに肩入れした結果、ルノーは自身の居城モントーバンに籠城を余儀なくされ、王軍による大規模な包囲戦という内戦に発展します。長期間の攻防の末、兵糧攻めに苦しんだルノーはバヤールを献上して降伏しますが、シャルロはその場でバヤールを無残にも殺害します。この出来事はルノーに深い絶望を与え、彼は騎士としての道を断念することになり、フランク王国は優れた騎士を失う痛手を負いました。

オジェ・ル・ダノワとの対立: デンマークの英雄、オジェ・ル・ダノワもまた、シャルロの凶行によって大きな苦難を経験します。オジェの息子ボルドウィンがシャルロとチェスをしていた際、シャルロはゲーム中に機嫌を損ね、怒りに任せてチェス盤でボルドウィンを殴り殺してしまいます。愛する息子を目の前で殺されたオジェは激怒し、宮廷で剣を抜いてシャルロを討とうとしますが、カール大帝によって阻止されます（伝承によっては、オジェがこの時シャルロを討ち果たしたとするものもあります）。皇帝はシャルロを庇い、オジェの逮捕を命じ、再び王国は混乱に陥ります。オジェは逮捕され投獄されますが、後に異民族（モーリタニア人）の侵攻という国家の危機に際し、その力量を必要とされて解放されます。解放されたオジェは、息子の仇であるシャルロと対峙しますが、物語によっては彼を殺すことなく許すという寛大な選択をします。しかし、この許しにも関わらず、シャルロの傍若無人な振る舞いが改まることはなかったとされています。

* ユオン・ド・ボルドーとの対立: シャルロの悪行は続き、最終的にはユオン・ド・ボルドーとの対立が彼の命運を決定づけます。奸臣の入れ知恵でギエンヌ公爵領を狙ったシャルロは、まだ幼いユオンの弟ジラールが一人で鷹狩りをしているところを無道にも襲撃し、武装もしていないジラールを槍で傷つけ落馬させます。この卑劣な行いを目撃したユオンは激怒し、弟の仇として、あるいは正当防衛としてシャルロを討ち取ります。皇帝の息子殺害という重罪を犯したユオンは、その後カール大帝の怒りを鎮めるために大変な苦難を経験することになります。

物語における役割

シャルロは、これらのエピソードを通じて、王権の腐敗や、親の盲目的な愛情が生む悲劇、そして不当な権力に対抗する英雄たちの苦悩を象徴するキャラクターとして描かれます。彼の破滅的な行動は、多くの武勲詩や騎士物語において、物語の重要な転換点や、主人公に課せられる試練として機能しており、その存在は英雄たちの勇気や正義を際立たせるための対照的な役割を果たしています。

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