シャルロット・ド・リュジニャン

シャルロット・ド・リュジニャンは、15世紀のキプロス女王であり、その生涯は波乱に満ちていました。1444年、キプロス王ジャン2世とその妻エレニ・パレオロギナの間に生まれ、王位継承者として育てられました。

しかし、彼女の王位は安泰ではありませんでした。父王には庶出の兄ジャックがおり、彼が王位を狙っていました。シャルロットはギリシャの伝統の中で育ち、ギリシャ語を愛しました。一方で、フランス語やイタリア語、そしてラテン語も理解していたと言われています。教皇ピウス2世は、彼女を「おしゃべりなギリシャ女」と評したそうです。

1456年、シャルロットはポルトガルの王族ジョアン・デ・コインブラと結婚しますが、ジョアンは翌年に急死します。母エレニによる毒殺説も囁かれています。1458年に両親が相次いで亡くなると、シャルロットは14歳でキプロス女王に即位しました。しかし、その治世は困難を極めました。庶兄ジャックが王位を狙い、内戦が勃発しました。

1459年、シャルロットは従兄にあたるジュネーヴ伯ルイ・ド・サヴォワと再婚し、ジェノヴァ共和国の支持を得ようとしました。しかし、1460年にはジャックの軍勢がニコシアを制圧し、シャルロットは夫と共にキレニア城に籠城を余儀なくされます。その後、1463年にローマへ亡命し、教皇ピウス2世に保護されました。教皇は、シャルロットを「中背の婦人、肌は色黒と色白の中間、なめらかな話しぶり」と評しています。

亡命後、シャルロットはロドス島に小規模な宮廷を築き、キプロス王位奪還を試みますが、失敗に終わります。その後も、ジャック2世の未亡人カタリーナ・コルナーロから王位を奪おうとしましたが、これも失敗に終わりました。1483年には教皇シクストゥス4世の招きでバチカン宮殿に滞在し、教皇と同格の待遇を受けました。

シャルロットは、ルイとの間に息子ユーグをもうけますが、生後間もなく亡くしています。その後、ナポリ王の庶子アルフォンソ・ダラゴーナを養子に迎えます。そして、1485年には、キプロスなどの名目的な王位請求権を、サヴォイア公カルロ1世に譲渡しました。

1487年、シャルロットは43歳でその生涯を閉じました。彼女の遺体は、サン・ピエトロ大聖堂に安置され、葬儀の費用は教皇インノケンティウス8世によって捻出されました。彼女の人生は、中世の権力闘争、王位継承、亡命といった様々な要素が絡み合い、複雑で波乱に満ちたものでした。シャルロットは、教養豊かで聡明な女性でありながらも、時代の波に翻弄された悲劇の女王として記憶されています。

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