シャン州民族軍

シャン州民族軍 (SSNA)

シャン州民族軍（Shan State National Army、略称: SSNA）は、1995年から2005年にかけてミャンマー東部のシャン州で活動した、シャン族を主体とする反政府武装勢力でした。この組織は、当時有力だった別のシャン族武装勢力であるモン・タイ軍（MTA）から分離して誕生しました。初期の司令官としてカンヨートの名前が挙げられます。

結成の背景と経緯

SSNAが生まれた背景には、1995年半ばにおけるモン・タイ軍（MTA）内部の亀裂がありました。同年6月、シャン州ライカでは、シャン族の民族主義者たちと、クンサーが率いるMTAに所属する中国系士官との間で対立が表面化しました。この対立は、MTAがシャン族自身の民族自決運動よりも、中国とミャンマー間の麻薬密輸に重点を置いているという、シャン族兵士たちの根深い不満に根差していました。

このような状況下で、MTAに所属していたシャン族の兵士たちは、組織からの離脱を決意しました。1995年7月7日、MTA内の不満分子を中心として、シャン州民族軍（SSNA）が結成されたのです。結成当初、SSNAは2人の司令官と約500人の兵士で構成されていました。彼らは、MTAがシャン族の真の利益よりも麻薬ビジネスを優先していると公然と批判しました。

結成後、SSNAの勢力は急速に拡大しました。1995年9月までには、さらに約2,000人の兵士がMTAを離れてSSNAに合流しました。彼らは、それまでMTAの本部が置かれていたホーモンを離れ、シャン州北部のシッポー周辺に新たな拠点を築きました。SSNAの兵力増強は、MTAが最終的にミャンマー政府軍に降伏し、多数の脱走兵を出しながら事実上解散した時期と重なります。

政府軍との関係と他組織との連携模索

SSNAは、設立間もない1995年12月には、当時のミャンマー軍事政権との間で「紳士協定」と呼ばれる停戦合意を結びました。これにより、一定期間は政府軍との直接的な衝突を避けつつ、活動を行うことになります。

またSSNAは、他のシャン族武装組織との連携や統合も模索しました。彼らは独自にシャン州軍 (北)やシャン州平和評議会といった組織を設立・連携し、1996年9月には、SSNA、シャン州軍 (北)、そしてヨートスックが率いるシャン州軍 (南)（SSA-S）という主要な三勢力が合同で政治部門「シャン州民族機構」および軍事部門「シャン州軍」を創設することを協議によって合意しました。これはシャン族武装抵抗運動の一体化を目指す重要な試みでしたが、残念ながら、この統合に向けた具体的な進展は見られず、計画は実現しませんでした。

さらに、1997年には、この未完に終わったシャン州民族機構の枠組みを通じて、ミャンマー軍事政権との停戦交渉を再開しようと試みました。しかし、政府側はすでにモン・タイ軍（MTA）の降伏によって問題は解決済みであるとして、シャン州軍 (南)などとのこれ以上の交渉の余地はないと主張し、SSNA側の提案を拒否しました。

活動の終焉と解散

SSNAの活動は、2005年に大きな転換点を迎えました。同年4月、ミャンマー軍はワ州連合軍（UWSA）と共同で、SSNA本部に対する大規模な軍事作戦を実行しました。この攻撃により、SSNAの主要な指導者の多くが逮捕・拘束されました。

作戦の進行に伴い、SSNAの部隊はミャンマー政府軍からの投降と武装解除を迫られました。2005年4月11日と5月19日には、SSNAの2つの旅団が政府軍の指示に応じて投降・武装解除を受け入れました。指導部の逮捕と部隊の武装解除が進む中で、SSNAは組織としての存続が困難となりました。

最終的に、SSNAは2005年5月までに事実上の解散状態となりました。多くの指導者が収監された他、SSNAの兵士たちは大きく二つの進路をたどりました。一部の旅団（第1、第11、第19旅団など）は武装解除された一方で、他の多くの兵士、特に司令官サイ・イーに率いられた約5,000人から6,000人の兵士は、統合が実現しなかったシャン州軍 (南)（SSA-S）に合流しました。第6、第9、第16旅団などがSSA-Sへの合流を選択した部隊として知られています。

このように、SSNAはMTAからの分裂という形で誕生し、他のシャン族組織との連携や統合を模索しつつ活動しましたが、最終的にはミャンマー政府軍の攻勢により解散し、その多くの兵士がシャン州軍 (南)に吸収される形で、シャン族武装抵抗運動の歴史における一つの章を閉じました。

もう一度検索