シャーガー

シャーガー：伝説的名馬の栄光と謎の失踪

シャーガー (Shergar, 1978年 - 不明) は、アイルランド生まれのサラブレッド競走馬にして種牡馬です。その名は、1981年のエプソムダービーにおける圧勝劇によって、競馬史に永遠に刻み込まれることとなりました。10馬身という、公式記録に残る史上最大の着差での勝利は、シャーガーの類まれな能力を世に知らしめるものとなりました。インターナショナルクラシフィケーション140ポンドという高い評価も受け、将来性豊かな種牡馬としてのキャリアも期待されました。しかし、その輝かしい経歴は、1983年の誘拐事件によって突然途絶えることになります。以来、シャーガーの行方は不明のままであり、数々の憶測を呼び、今日まで語り継がれる謎となっています。

華麗なる競走生活

シャーガーは、著名なオーナーブリーダーであるアーガー・ハーン4世の所有馬でした。アーガー・ハーン4世の所有馬には、馬名の由来が不明な馬が多いことで知られていますが、シャーガーも例外ではありません。2歳時（1980年）のデビューは勝利で飾りましたが、その後は2着と、当初からの評価はそれほど高くありませんでした。しかし、3歳時（1981年）のダービーステークスに向けた準備は着実に進められました。クラシックトライアル、チェスターヴァーズと圧勝を重ね、ダービーステークスでは単勝1.9倍の1番人気に支持されました。そして迎えた本番、シャーガーは圧巻の走りで、2着馬に10馬身差をつける圧勝劇を演じます。騎乗したウォルター・スウィンバーン騎手は、レース後「あんなに大差がついていることに気づかなかった」と述懐しました。

その後も、アイリッシュダービー、キングジョージ6世＆クイーンエリザベスステークスと立て続けに勝利を重ね、イギリスとアイルランドのダービーを制覇した7頭目の競走馬となりました。セントレジャーステークスには、凱旋門賞へのステップレースとして出走しましたが、4着に敗れ、そのまま引退することになります。その年のイギリス年度代表馬に選出されたことは、シャーガーの実力と人気を改めて示すものとなりました。

種牡馬としての成功と誘拐事件

競走馬を引退したシャーガーは、アイルランドのバリメニー牧場で種牡馬となりました。既に高額なシンジケートが組まれており、その期待の高さがうかがえます。初年度は44頭の牝馬と交配し、28頭の仔馬が誕生しました。その中には、アイリッシュセントレジャーを制したアウザールなど、活躍馬も輩出しています。しかし、1983年2月、繁殖シーズンの直前に誘拐事件が発生します。覆面をした男たちが牧場に侵入し、シャーガーを連れ去ったのです。犯人グループからの身代金要求は拒否され、シャーガーは消息不明となります。その後、様々な憶測が飛び交いましたが、真相は解明されることはありませんでした。アイルランド警察は、アイルランド共和軍（IRA）による犯行で、誘拐後間もなく殺害された可能性を示唆する発表をしています。

シャーガー伝説とエイプリルフール

シャーガーの誘拐事件は、時が経つにつれて伝説となり、エイプリルフールの定番ネタとして定着しました。シャーガー発見を報じる新聞記事や、遺体発見のニュースが毎年報道され、人々の関心を集め続けています。中には、真剣に受け止められた報道もありましたが、いずれも後からジョークであることが判明しています。こうした現象は、シャーガーへの変わらぬ関心の高さ、そしてその謎めいた失踪劇が人々の想像力を掻き立てることを物語っています。

映画化

シャーガーの誘拐事件は、ハリウッドで映画化もされました。映画『シャーガー』では、シャーガーを愛する少年が、彼を救出するというストーリーが描かれています。

シャーガーの遺産

シャーガーは、その短い競走生活と謎の失踪によって、伝説的名馬となりました。その名声は、競走成績や種牡馬としての成功にとどまらず、エイプリルフールのジョークとして、あるいは映画の題材として、現代まで語り継がれています。シャーガーの生涯は、競馬史におけるひとつの大きな謎であり、同時に、人々の記憶に深く刻まれた物語です。彼の血統はアウザールを通して繋がっており、イラン・イスラム共和国で存続している可能性が示唆されています。また、彼の名を冠したシャーガーカップは、毎年アスコット競馬場で開催され、世界中からトップジョッキーが集まる大イベントとして認知されています。シャーガーの伝説は、これからも語り継がれ続けるでしょう。

もう一度検索