シャープ堺工場

シャープ堺工場の概要

シャープ堺工場は、大阪府堺市に位置する、かつてシャープが所有していた巨大な生産拠点です。2009年に約4300億円を投じて建設され、当初は液晶パネルと太陽電池の製造を主力としていました。しかし、2024年に生産を停止し、その歴史に幕を閉じました。

工場は、液晶工場と太陽電池工場で構成されていました。2009年に液晶部門が「シャープディスプレイプロダクト（現・堺ディスプレイプロダクト）」として分社化されたため、一時的に「シャープ堺工場」は太陽電池工場のみを指すようになりました。しかし、液晶工場は2016年に鴻海精密工業グループの傘下となり、2022年にシャープが買い戻したという複雑な経緯を辿っています。

工場全体は「グリーンフロント堺」と称され、環境への配慮が評価され、2010年には大阪サステナブル建築賞を受賞しました。工場内には、液晶工場、太陽電池工場のほか、複数の関連会社も存在していました。また、液晶工場には堺ディスプレイプロダクトの本社があり、太陽電池工場にはシャープ本社が置かれていました。

歴史

旧新日本製鐵堺製鐵所の遊休地を利用して建設された堺工場は、稼働開始当初、世界最大規模の液晶パネルと太陽電池の工場でした。それ以前は、シャープ亀山工場が液晶の主力、葛城工場が太陽電池の主力でした。工場所在地は、稼働時に「築港八幡町」から「匠町」へと変更されました。

液晶ディスプレイパネル工場は、ソニーとの合弁を視野にシャープディスプレイプロダクトとして分社化され、ガラス基板やカラーフィルターなどのサプライヤーも工場内に拠点を構えました。しかし、設立以来、巨額の赤字を計上し、シャープの経営危機を招いた要因の一つとなりました。

シャープは、経営危機を脱するため鴻海グループとの資本提携を模索しましたが、交渉は難航。結果として、鴻海の郭台銘董事長が個人で堺工場を引き継ぐことになりました。郭台銘氏は、当時、シャープ本体の負債問題が明らかになり、シャープ本体への出資を断念せざるを得なかったと語っています。2012年、シャープはシャープディスプレイプロダクトへの出資比率を下げ、堺ディスプレイプロダクトとして再編され、鴻海グループの傘下となりました。

その後、堺ディスプレイプロダクトは黒字化を達成し、経営を立て直しました。2016年にはシャープ本体も鴻海が買収し、工場全体が鴻海グループの傘下となりました。シャープは、旧本社を売却し、本社機能を堺工場内に移転しました。

生産停止と今後の展望

堺ディスプレイプロダクトは、大型液晶パネルの価格下落により赤字に転落し、2021年には一時的に黒字化しましたが、再び赤字に陥りました。特に2023年には巨額の損失を計上し、シャープ本体も赤字に転落しました。そのため、取引銀行からの圧力もあり、2024年8月にパネルの生産を停止しました。国内最後のテレビ用パネル工場だったため、その影響は大きかったと言えます。

生産停止後、シャープの元液晶パネル工場はソフトバンク、KDDI、積水化学工業によって譲受されることが決定しました。ソフトバンクとKDDIはAIデータセンターを、積水化学工業はペロブスカイト太陽電池の製造工場を建設する予定です。

グリーンフロント堺

「グリーンフロント堺」として、環境への配慮を徹底していました。具体的には、以下のような取り組みが行われていました。

統合エネルギー管理システムの導入
部品工場を隣接させる「21世紀型コンビナート」の導入
工場間の搬送システムの導入
LED照明の採用

主な生産品目

大型液晶テレビ「AQUOS」
大型液晶パネル
* 太陽電池「SUNVISTA」

まとめ

シャープ堺工場は、日本のエレクトロニクス産業を牽引してきた重要な拠点の一つでした。しかし、価格競争や経営状況の変化により、その役割を終えることになりました。今後は、新たな事業に転換し、その土地が有効活用されることが期待されます。

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