シュティレ鉱

シュティレ鉱：希少なセレン化鉱物

シュティレ鉱(Stilleite)は、セレンと亜鉛からなるセレン化鉱物の一種です。その存在はきわめて稀であり、通常は他のセレン化鉱物や硫化鉱物の中に微小な結晶として含まれて発見されます。肉眼では確認できず、顕微鏡を用いた観察が必要となるほど小さな、灰色をした結晶として産出することが知られています。

1956年、当時ザイール共和国と呼ばれていたコンゴ民主共和国カタンガ州で初めて発見されました。その発見を記念し、ドイツの地質学者であるハンス・シュティレ(Hans Stille)の名前にちなんで命名されました。シュティレ鉱は、世界的に見ても産出量が非常に少ない鉱物であり、その存在は鉱物学においても特筆すべき事項です。

コンゴ民主共和国以外では、アルゼンチンのラ・リオハ州にあるサンタ・ブリジダ鉱山、そしてドイツのハルツ山地にあるティルケローデ鉱山からも報告されています。これらの産地においても、シュティレ鉱は微量にしか産出しておらず、主要な鉱物ではありません。

共生鉱物

シュティレ鉱は、単独で産出することはほとんどなく、他の様々な鉱物と共存して発見されます。コンゴ民主共和国での産出においては、黄銅鉱、リンネ鉱、セレン鉛鉱、セレン化ベース鉱、輝水鉛鉱、苦灰石などが共生鉱物として挙げられます。これらの鉱物は、シュティレ鉱と同様、セレンや硫黄を含む鉱物である場合が多いです。

一方、アルゼンチン産のシュティレ鉱には、セレン水銀鉱、セレン鉛鉱、セレン銅銀鉱、ウマンゴ鉱、クロックマン鉱などが共生していることが報告されています。これらの共生鉱物の種類は、それぞれの産地の地質学的環境を反映していると考えられます。それぞれの鉱物の化学組成や結晶構造を比較検討することで、シュティレ鉱の生成条件や地質学的背景をより深く理解することが期待されます。

閃亜鉛鉱グループとの関連

シュティレ鉱は、化学組成や結晶構造において閃亜鉛鉱グループ(Sphalerite group)と関連があります。閃亜鉛鉱グループは、硫化亜鉛を主成分とする鉱物グループですが、硫黄の一部がセレンやテルルで置換された鉱物が含まれています。シュティレ鉱は、このグループの中でもセレンを多く含む鉱物として分類されます。

閃亜鉛鉱グループの鉱物は、様々な地質環境で形成されることが知られており、その多様性は鉱物学において重要な研究対象となっています。シュティレ鉱の研究を通じて、閃亜鉛鉱グループの生成メカニズムや地質学的意義に関する理解が深まることが期待されます。

まとめ

シュティレ鉱は、極めて稀少なセレン化鉱物であり、その産出量は非常に少ないです。コンゴ民主共和国を主な産地としていますが、アルゼンチンやドイツでも少量発見されています。他の鉱物との共生関係や、閃亜鉛鉱グループとの関連性から、シュティレ鉱の研究は地質学や鉱物学において重要な意味を持ちます。今後、さらなる研究を通して、この希少な鉱物の生成メカニズムや地質学的意義が解明されることが期待されます。

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