苦灰石

苦灰石：性質、産出、そして利用

苦灰石、別名ドロマイトは、炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムを主成分とする炭酸塩鉱物です。その化学式はCaMg(CO3)2で表され、三方晶系に属します。色は無[[色]]透明から白色、灰[[色]]、桃色など様々で、モース硬度は3.5～4、比重は約2.85です。

石灰石とよく似た外観を持つ苦灰石ですが、決定的な違いは希塩酸に対する反応性です。石灰石は希塩酸をかけると活発に二酸化炭素を発生させますが、苦灰石では反応は弱く、泡立ちが少ないのが特徴です。この性質は、海水や雨水による浸食に対する抵抗性の高さに繋がっています。ウニなどの棘皮動物の骨格は、方解石と苦灰石の中間的な組成の鉱物の単結晶から構成されている点も興味深い事実です。

産出と生成

苦灰石は、苦灰岩という堆積岩の主要構成鉱物として産出します。苦灰岩は、石灰質堆積物が海水中のマグネシウムイオンと反応することで生成されたと考えられています。日本においては、北海道から沖縄まで広く分布し、石灰石の産地としばしば同じ地域で見られます。特に石灰石の山麓部で多く発見されています。

石灰石と比較して、苦灰石はより緻密で硬い肌理を持ち、割れ方は比較的鋭い傾向があります。色はライトグレーが基本ですが、塩化鉄や酸化鉄などの不純物を含むことで、それぞれ黄色や赤みを帯びる場合があります。しかし、圧力がかかった状態であっても、頁岩のように平行に割れることは少なく、砕けたり欠けたりしやすいという特徴があります。

苦灰石の割れ目や空洞内では、炭酸[カルシウム]が結晶化しやすく、方解石や霰石などの結晶が見られることもあります。また、ドロマイトが火成岩と接触して接触変成作用を受けると、ドロマイトスカルンと呼ばれる鉱床を形成し、マグネシウムを含むケイ酸塩鉱物が生成されます。さらに、蛇紋岩などの超塩基性岩の空隙に脈状に産出する場合もあります。岩手県和賀町岩沢では、球状の苦灰石が産出することで知られており、これは霰石の仮晶であると考えられています。

利用

苦灰石は、セメントの原料、マグネシウムの原料、製鉄用耐火材などとして、石灰石と共に重要な資源として利用されています。石灰石と共存していることが多く、両者を同時に採掘することが一般的です。

苦灰石グループ

苦灰石は、化学組成が類似した鉱物グループを形成しており、その中には以下のような鉱物が含まれます。

苦灰石 (Dolomite): CaMg(CO3)2
アンケル石 (Ankerite): Ca(Fe,Mg,Mn)(CO3)2
クトナホラ石 (Kutnohorite): CaMn(CO3)2
ミレンコーダイト (Minrecordite): CaZn(CO3)2
* ノーセス石 (Norsethite): BaMg(CO3)2

これらの鉱物は、苦灰石と同様に炭酸塩鉱物であり、地球化学的な環境や生成条件の違いによって、様々な組成の鉱物が形成されます。苦灰石の研究は、地球科学、鉱物学、そして資源工学の分野において重要な役割を果たしています。

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