シュルトゥン

シュルトゥン（Xultún） - 古典期マヤ文明の遺跡

シュルトゥンは、グアテマラのペテン県北東部に位置する古典期マヤ文明の重要な遺跡で、南に約9kmの距離には著名なサン・バルトロ遺跡があります。この地域はかつてのマヤ文明の繁栄を物語る場所であり、現在もその調査活動が進められています。シュルトゥンの遺跡は、過去に略奪者の影響を受けたものの、21世紀に入って調査が本格化し、その価値が見直されています。

環境と遺跡の変遷

先古典期においては、サン・バルトロ遺跡がこの地域で最も大規模な遺跡でした。しかし、環境の劣化によって土壌流出や森林破壊、さらには旱魃が発生し、人々はこの地を離れ、シュルトゥンへと移動したと考えられています。シュルトゥンは、周囲に広がる湿地帯と5つの貯水池によって潤い豊かな環境が整っており、住民たちにとって非常に魅力的な場所でした。

都市としてのシュルトゥンは、5世紀から9世紀にかけて繁栄を極め、大規模な公共建築や広場、多くのモニュメントが存在し、それらは周囲に広がる住宅地によって囲まれていました。この遺跡からは、マヤ文明の公共の場や宗教的な活動が行われていた証拠が数多く見つかっています。

壁画の発見

2012年、シュルトゥンの小さな建物からは、マヤ暦を記した壁画が発見され、大きな注目を集めました。この壁画には、王や書記が描かれ、月や火星、金星など天文学的な要素に基づくマヤの暦と計算表が示されています。この発見は、『サイエンス』誌の2012年5月号で発表され、当時流行していた2012年人類滅亡説と関連して、日本を含むメディアで多く取り上げられました。興味深いことに、この遺跡には9世紀から7000年分の暦記録があり、当時のマヤ人たちは2012年について終末を予測していなかったことが明らかとなっています。

ヒキガエルの汗風呂

シュルトゥンからは、「ロス・サポス」と呼ばれる汗風呂の跡も発見されています。そこには、ヒキガエルのようにしゃがんだ姿の女神の像があり、その脚の間には入口があります。汗風呂を利用する人々がこの女神を通ることによって、死と再生の象徴的な意味合いを持っているのかもしれません。このような文化的要素は、シュルトゥンが古代マヤの信仰と儀式の中心地であったことを示しています。

研究の歴史

シュルトゥンの発見は1920年に遡ります。当時、シルヴェイナス・モーリーがチクレロからその存在を知られ、ユカテコ語で「終わりの石」と名付けました。この名前は、シュルトゥンの石碑10に記されていた最も新しい長期暦の日時に由来しています。遺跡は1921年から1924年にかけてカーネギー研究所によって調査が行われましたが、その後何十年にもわたり、不十分な調査と略奪により、その状態は悪化しました

1970年代になると、ハーバード大学のErik von Euwがシュルトゥンを訪れ、遺跡が大きく略奪されている様子を報告しています。7世代にもわたる研究の中で、シュルトゥンは21世紀に入ってから本格的な調査が進められるようになりました。2001年からはウィリアム・サターノを中心としたプロジェクトによって、遺跡の発掘が進行し、盗掘者による影響を受けた場所から重要な壁画が発見されるなど、その文化的価値が再評価されています。

シュルトゥンは、古典期マヤ文明の偉大さを伝える貴重な遺跡であり、今後の研究が期待されます。

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