シリオ (路面電車車両)

シリオ（Sirio）

シリオは、イタリアのアンサルドブレーダによって開発され、現在は日立レールが展開する路面電車車両です。この車両は超低床設計を特徴とし、乗客が快適に利用できるように工夫されています。シリオという名前は、イタリア語で「シリウス」を意味し、その名の通り特異なデザインと機能性を誇っています。

概要と構造

シリオの最大の特徴は、車内の床上高さが350mmに統一された100％低床構造です。この設計により、車両の中には段差がなく、バリアフリーに対応しています。加えて、台車は独立車輪式で、全長が短い車体と連接編成の形式を取っています。これは、短い車体の間に連結部分が存在し、レイアウトが柔軟であることを意味します。

開発の際には強度や安全性が重視されており、運転台は床上高さ850mmに位置しています。視認性を考慮した設計で、運転手の安全にも配慮されています。車両のデザインはイタリアのカロッツェリアであるピニンファリーナによって行われており、そのスタイリッシュな外観が魅力の一つです。これにより、都心の景観とも調和します。

さらには、モジュール構造を採用しているため、全長や車幅、運転台の数といった顧客のニーズに合わせたカスタマイズも可能です。また、主要な電気機器は屋根上に配置されており、メンテナンスが容易です。2021年にはフィレンツェ市電で蓄電池駆動の試運転が成功し、その可能性も広がっています。

運用の歴史

シリオの開発は1997年に始まり、2000年には試作車がミラノ市電で試運転されました。以降、2002年からは世界各国に導入が進みましたが、その中にはハンガリーのミシュコルツ市電向けの受注もありました。しかし、後にこの契約はキャンセルされる事態となりました。

トラブルと課題

シリオに関するトラブルも報告されています。特にスウェーデンのヨーテボリ市電に納入された数両では、納入が遅れ、営業開始後には空調や振動、騒音に関する問題が発生しました。さらに、2013年には腐食が確認され、多くの車両が運用を離脱することになりました。ヨーテボリ市は修繕を依頼しましたが、品質に問題があり、契約を打ち切る結果となりました。このトラブルに関する損害賠償請求が行われ、仲裁裁判所はアンサルドブレーダに対し賠償金を命じました。

シリオTTとライセンス生産

2010年には、イタリアのジェノヴァ・カゼッラ鉄道向けにシリオTTという形式の車両が開発されました。この車両は、道路と鉄道の両方で運用できるように設計されたものです。しかし、発注がキャンセルされたため、実際の製造は行われずに終わりました。

近年には中国の企業によってシリオのライセンス生産も行われています。中国中車大連機車車輛有限公司がアンサルドブレーダと契約を結び、中国各地の路面電車に超低床電車を供給しています。

終わりに

シリオは、その革新的なデザインとバリアフリー設計により、多くの都市で利用され続けていますが、製品の信頼性を確保するための工夫と改善も求められています。日立レールが引き続きシリオの発展を目指していることで、今後の動向が注目されます。

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