シリキウス (ローマ教皇)

シリキウス（Siricius, 334年頃 - 399年11月26日）は、第38代ローマ教皇であり、その在位期間は384年12月11日から399年11月26日まででした。彼の生涯は、当時の教会と政治の複雑な関係の中で重要な役割を果たしました。

シリキウスは、382年に司祭として初めて古代ローマの最高神祇官に任命されました。しかし、この役職は後にローマ皇帝グラティアヌスによって解任されることになります。384年には、対立[[教皇]]ウルシヌスとの選挙を制し、満場一致でローマ教皇に選出されました。この選挙での勝利は、彼の教皇としての権威を確立する上で重要な意味を持ちました。

特筆すべきは、シリキウスが「教皇」という称号を初めて名乗った人物であることです。それまでの教皇は単に「ローマの司教」と認識されていましたが、シリキウスによって「教皇」という称号が確立され、より広範な権威を示すようになりました。また、シリキウスは教皇教令を発した最初の教皇でもあります。彼の最初の教皇教令は、ヒスパニアのタラゴナの司祭に向けられたものでした。この教令は、教皇の権威がローマだけでなく、遠隔地にも及ぶことを示す重要な事例となりました。

シリキウスは、聖職者の非婚制に関する2つの教令を発布しました。これは、当時の教会における聖職者の規律を強化するためのものでした。これらの教令は、後の教会法に大きな影響を与えることになり、今日でもその一部は受け継がれています。

さらに、シリキウスは異端とされたプリスキリアヌス派の問題にも積極的に関与しました。ヒスパニアの禁欲的なプリスキリアヌス派の司祭たちが、西ローマ帝国の皇帝マグヌス・マクシムスによって魔術を行った罪で処刑された際、シリキウスはミラノの司教アンブロジウスやトゥールのマルティヌスと共に、この判決に異議を唱えました。この行動は、教皇が世俗の権力に対して独立した立場を取ることを示し、教会の正義を追求する姿勢を明らかにしました。

シリキウスの祝日は11月26日に定められています。これは彼の死没日であり、キリスト教における聖人として崇敬されている証です。彼の業績は、教皇制の基礎を築き、キリスト教の歴史において重要な役割を果たしました。シリキウスは、教皇の権威を確立し、教会の規律を強化し、異端に対する抵抗を示した人物として、記憶されるべき存在です。

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