シルエットパズル

シルエットパズルとは、あらかじめ決められた様々な形の断片（ピース）全てを用いて、問題として提示された枠やシルエットと同じ形を正確に組み上げていくパズルです。

歴史

この種のパズルの歴史は非常に古く、確認できる記録の中で最も古いものは紀元前3世紀頃の古代ギリシアで生まれたとされています。これは「アルキメデスの小筥」、または「ストマッキオン」と呼ばれ、正方形を14個の小さな多角形に分割したものでした。このパズルは、道具を使ったパズル全般の中でも特に古い部類に属すると考えられています。

東洋でも独自の発展を遂げました。有名なタングラムについては、中国の宋代の学者、黄伯思が著した机の配置に関する書物「燕几図」における、7つの長方形の机の並べ方が原型であるという説があります。これが明代になり、厳澄が三角形や台形などを用いた「蝶翅几」を考案し、さらに発展させたものがタングラムになったと推測されています。

日本においては、江戸時代中期の1742年に「清少納言智恵の板」という書物で、同名のシルエットパズルが紹介されていますが、考案者は不明です。また、翌1743年には数学者の中根彦循が自身の著書の中で、正方形を6つの断片に切って様々な形を作る例を示しています。

タングラムは中国で19世紀初頭に「七巧八分図」「七巧図合壁」といった解説書が刊行される頃には完成された形となり、この時期に欧米にも伝わり急速に普及しました。歴史上の人物であるナポレオン・ボナパルトもこのパズルを愛好したと言われています。

19世紀末には、ドイツのリヒター社が煉瓦のような素材を用いた「アンカーパズル」の製造販売を開始し、第一次世界大戦中に大きく流行しました。これを受けてピースの形を変えた様々なシルエットパズルが登場しましたが、大戦終結後の需要低下や安価なプラスチック製品の台頭により、アンカーパズル自体は姿を消しました。しかし、その中の一部の作品は現在も名称や材質を変えて販売されています。

代表的なシルエットパズル

シルエットパズルには様々な種類がありますが、ここではその代表的なものをいくつか紹介します。

知恵の板

正方形や円といった基本的な図形を、一般的に5～10個程度のピースに分割し、それら全てを使ってシルエットを完成させるタイプです。タングラムはこの代表格と言えます。
タングラム以外にも、以下のようなものが知られています。

ラッキーパズル: 長方形を7つのピースに分割したもので、特に十字架の形を作れることから「クロスパズル」とも呼ばれます。
IVYパズル: 小黒三郎氏の作品で、正六角形を7つのピースに分割します。7片のうち3片がそれぞれアルファベットのI、V、Yの形をしています。
デビル（コボルト）: 長方形、あるいは2つの菱形を直角に重ねたような図形を7つのピースに分割したものです。
サーキュラーパズル: 円を10個のピースに分割したものです。
コロンブスの卵: 卵形を9つのピースに分割したもので、特に鳥のシルエットを作る例が多いです。
清少納言知恵の板: 正方形を7つのピースに分割したもので、18世紀の日本で誕生したとされています。

片数の多いもの

より複雑なシルエットを表現するため、ピースの数が10片を超えるシルエットパズルも存在します。これらは主に正方形を分割したものです。

アルキメデスの小筥（ストマッキオン）: 14片からなり、紀元前ギリシアで生まれた、記録上で確認できる最古のシルエットパズルです。
益智図: 15片からなる中国のパズルで、半円形のピースが含まれています。
日本の知恵の板: 15片のものと19片のものがあり、18世紀末に日本で誕生しました。益智図と同様に半円形のピースが含まれています。

文字パズル

あらかじめ与えられたピースを用いて、特定の文字や記号の形を作ることに特化したパズルです。

Tパズル: 4つのピースでアルファベットの「T」の文字を完成させます。
Fパズル: 6つのピースでアルファベットの「F」の文字を作るパズルで、芦ヶ原伸之氏の作品です。
十字架パズル: 十字架の形を作るパズルで、ピースの数にはいくつかのバリエーションがあります。

これらのシルエットパズルは、単なる遊びとしてだけでなく、図形認識能力、空間把握能力、そして論理的な思考力を養う教育的な側面も持っています。その長い歴史と多様な種類は、時代や文化を超えて多くの人々を魅了し続けていることの証と言えるでしょう。

もう一度検索