シロスジカミキリ

シロスジカミキリ（白筋髪切）

シロスジカミキリ（学名: Batocera lineolata）は、カミキリムシ科に分類される大型の甲虫です。日本ではフトカミキリ亜科の最大種であり、雑木林などの広葉樹林で見られます。

形態

成虫の体長は約5cm。体色は光沢のない灰褐色で、前翅には黄色の斑紋や短い筋模様が並びます。前胸部にも縦長の斑点があります。これらの模様は死後白色に変化し、「白い筋模様」が和名の由来となっています。体側には太い白帯模様がありますが、上からは見えにくいです。触角の長さは体長の1倍から1.5倍程度で、オスの方が長いです。頭部は大きく、発達した大顎と大きな複眼がいかつい印象を与えます。

生態

平地から標高1500m以下の山地の広葉樹林、河川敷のヤナギやアキニレ林、クリ畑などに生息し、様々な樹木を住処および食料としています。幼虫はクリ、クヌギ、コナラ、アベマキ、アカガシ、スダジイ、ヤナギ、ハルニレ、アキニレ、ケヤキ、シラカバ、オニグルミ、イチジク、ハンノキ、ダケカンバ、ミズナラなど、非常に多くの種類の生木の材部を食害します。成虫もこれらの樹木の樹皮や芽を食害し、樹液にも集まります。

成虫は地域差はありますが、5月のゴールデンウィーク明け頃から活動を開始します。夜行性が強く、日没から夜明け前にかけて、後食、生殖、飛翔などの行動を行います。灯火にも飛来します。日中は木の梢や茂みに潜んでいることが多いです。大型ながら飛翔能力が高く、夕刻から夜間に活発に飛び回ります。日中でも日陰や森林内では飛翔することがあります。6月頃から夜間に交尾・産卵を行います。寿命は数ヶ月程度で、8月には死亡する個体が多いですが、10月頃まで生き残る個体もいます。

交尾後のメスは、生木の幹の低い位置に円形の穴をあけて産卵します。メスは移動しながら次々と産卵するため、幹には輪状の産卵痕が残ります。産卵部位は師管や道管を損傷するため、樹皮が再生してもささくれ立ったり、こぶ状に肥大したりします。過去の産卵痕は特徴的なため、遠くからでも確認できます。比較的若い木を好む傾向があり、老木の多い雑木林やクリ畑では個体数が減少しています。近年はヤナギやアキニレの若木に集まる傾向があります。産卵対象となる木は、既に幼虫によって加害されていることが多いです。

孵化した幼虫は樹皮下から材部を食害し、トンネルを形成します。これにより木の強度が低下し、折れやすくなります。シロスジカミキリは大型で、成長に3〜4年かかるため、木へのダメージも大きいです。クリやコナラの太い木が根元から折れる原因となることもあります。

十分に成長した幼虫は幹の中で蛹になり、5月から6月頃に直径2〜3cmの円形の穴を開けて成虫となって外に出てきます。

卵から成虫までの生存率は低く、産卵された個体が全て途中で死亡することも珍しくありません。

ブナ科の樹木を食い荒らすため、クリ畑などでは害虫として扱われますが、雑木林の新陳代謝を促す側面もあります。成虫の脱出痕や産卵痕からは樹液が染み出し、カブトムシやクワガタムシなど多くの昆虫が集まります。

天敵としては、幼虫に寄生するハチコマユバチ科のウマノオバチが知られています。また、キツツキは幹の中に潜む幼虫を捕食します。

分布

インド東部から朝鮮半島、日本まで東南アジアに広く分布しています。日本では本州以南に分布しますが、標高の高い山地には少ないです。

シロスジカミキリ属

シロスジカミキリ属（Batocera）には、以下の種が含まれます。

シロスジカミキリ Batocera lineolata
イチジクカミキリ Batocera rubus - 外来種
ウォレスシロスジカミキリ Batocera wallacei - 大型種。絶滅危惧種
カタトゲシロスジカミキリ Batocera humeridens
ラエナシロスジカミキリ Batocera laena*

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