「
シンガプーラ」は、1976年11月30日にリリースされた
加藤和彦の5枚目のソロ
シングルです。この楽曲は、
作詞を
安井かずみ、
作曲・編曲を
加藤和彦が担当した初の共作
シングルであり、
加藤和彦が
サディスティック・ミカ・バンド解散後に発表した作品として、音楽ファンにとって重要な一曲となっています。
制作背景
1975年11月にミカ・バンドを解散し、ミカとも離婚した
加藤和彦は、1976年に
安井かずみと同棲を開始し、共同で楽曲制作を始めました。「
シンガプーラ」とそのカップリング曲「キッチン&ベッド」は、この時期に制作されたもので、安井の歌詞には、旅行で訪れた
シンガポールの印象や、加藤との生活が反映されています。
音楽的特徴
加藤和彦は、ポール・サイモンのアルバム『ひとりごと』などを通じて関心を抱いていた、白人による
リズム・アンド・ブルースのサウンドを追求するため、安井とともにアメリカに渡り、アラバマ州シェフィールドのマッスル・ショールズ・サウンド・スタジオで、同スタジオのハウスミュージシャンと共にレコーディングを行いました。その後、フロリダとカリフォルニアでダビングとミックスダウン作業を行い、この楽曲を完成させました。この音楽的な挑戦は、加藤の新たな音楽性を確立する上で、重要な経験となりました。
リリースと影響
シングル「
シンガプーラ」は11月にリリースされ、翌月に発売された
安井かずみとの初の共作アルバム『それから先のことは…』にも収録されました。加藤はこの時の東南アジア旅行を通じて、アジアとしての日本を再認識したと語っています。また、楽曲のタイトルは、
シンガポールの旧称を指しており、猫の品種との関連性はありません。この楽曲は、後に
シンガポール航空のCMにも使用され、幅広い層に知られることになりました。
カバーと関連作品
杏子のカバー
2003年には、杏子がこの曲をカバーし、
シングルとしてリリースしました。このカバーは、
オフィスオーガスタが設立した自社レーベルからの第2弾
シングルとして発表され、アルバムバージョンと
シングルバージョンが存在します。
安井かずみは、この曲に新たな歌詞を書き下ろし、「愛のハーモニー」として1984年に
アグネス・チャンの
シングルで発売されました。このバージョンも、原曲とは異なる魅力を持っています。
収録曲とパーソネル
SIDE A
1.
シンガプーラ (SINGAPURA) – (3:45)
ヴォーカル、ギター:
加藤和彦
ギター: ジミー・ジョンソン, ピート・カー
キーボード: バリー・ベケット, ティム・ヘンソン
ベース: デヴィッド・フッド
ドラムス: ロジャー・ホーキンス
フルート: ハーヴェイ・トンプソン
ストリングス
SIDE B
1. キッチン&ベッド (KITCHEN & BED) – (4:19)
ヴォーカル、ギター:
加藤和彦
ギター: ジミー・ジョンソン, ピート・カー
キーボード: バリー・ベケット, ティム・ヘンソン
ベース: デヴィッド・フッド
ドラムス: ロジャー・ホーキンス
トランペット: ハリソン・キャロウェイ
テナーサックス: ハーヴェイ・トンプソン
トロンボーン: チャールズ・ローズ
バリトンサックス: ロニー・イーデス
シンガプーラ (アルバムバージョン、
シングルバージョンあり)
Land of the rising sun (オリジナル曲、
土屋昌巳とのセッション)
I'm Losing You (
ジョン・レノンのカバー、ライブ録音)
参考文献
この楽曲に関する参考文献として、雑誌や書籍が複数存在します。当時の音楽シーンや
加藤和彦の活動、
安井かずみとの関係などを深く知る上で、これらの資料は貴重です。
『
GORO vol.3. no.8. 1976年4月22日号』小学館, 1976年3月。
『
月刊プレイボーイ 1976年5月号』集英社, 1976年5月。
『
加藤和彦、
安井かずみのキッチン&ベッド』主婦と生活社, 1977年7月。
『
加藤和彦スタイルブック あの頃、マリー・ローランサン』CBSソニー出版, 1983年11月。
安井かずみ・
加藤和彦『ワーキングカップル事情』(文庫版)新潮社, 1986年3月。
『
ミュージック・マガジン 2004年6月号』株式会社
ミュージック・マガジン, 2004年6月。
文藝別冊 (編)『
加藤和彦 あの素晴しい音をもう一度』河出書房新社, 2010年2月。
島崎今日子 (編)『
安井かずみがいた時代』(文庫版)集英社, 2013年2月。
前田祥丈 (聞き手・構成)『エゴ〜
加藤和彦、
加藤和彦を語る』スペースシャワーネットワーク, 2013年7月。
外部リンク
OFFICEAUGSTA.COM
DISCOGRAPHY – 杏子 Official Web Site
「
シンガプーラ」は、
加藤和彦と
安井かずみの才能が融合した、時代を超えて愛される名曲です。その音楽的挑戦と、歌詞に込められた物語は、今も多くの人々を魅了し続けています。