シングウィズジョイ

シングウィズジョイ（英: Sing with Joy）は、「楽しそうに歌う」という名前がつけられた日本の競走馬です。2015年にフローラステークスとターコイズステークスという二つの重賞レースで勝利を飾り、翌2016年には国内最高峰のGIレース、エリザベス女王杯で惜しくも2着となるなど、その競走能力の高さを示しました。しかし、5歳を迎えた2017年、出走したレースで不慮の事故に巻き込まれ、無念にも競走馬としてのキャリアを終えることとなりました。

競走生活の歩み

2歳（2014年）

競走馬としてのスタートは2歳の秋でした。デビュー戦は惜しくも勝利を逃し2着でしたが、続く未勝利戦でしっかりと実力を発揮し、初勝利を挙げました。その後、初めてオープンクラスに挑戦した野路菊ステークスでは、強豪ダノンメジャーに次ぐ2着に入り、将来の活躍を予感させる走りを見せました。

3歳（2015年）

3歳シーズンに入ると、クラシック戦線を目指し重賞に挑みました。オークスの重要なステップレースであるフローラステークスで、力強い末脚を繰り出し勝利。これが自身にとって初めての重賞タイトル獲得となりました。残念ながらクラシック本番では振るいませんでしたが、古馬との初対戦となった年末のターコイズステークスでは、11番人気という低評価を覆して優勝。このレースでは下位人気馬が上位を占め、3連単が295万円を超える大波乱となり、シングウィズジョイの勝利はより一層印象的なものとなりました。

4歳（2016年）

4歳になり、古馬の仲間入りを果たしました。年明け初戦の中山牝馬ステークスでは、鞍上に岩田康誠騎手を迎えるも大敗を喫し、その後約7ヶ月の長期休養に入りました。秋に復帰した府中牝馬ステークスでは、田辺裕信騎手が手綱を取り先行する競馬を見せましたが、直線で伸びを欠き7着に終わりました。仕切り直しを図った次走は、牝馬の最高峰レースであるエリザベス女王杯（GI）に出走。ここではクリストフ・ルメール騎手とコンビを組み、12番人気という評価ながら、果敢に先行策を取り直線でも粘り強い走りを見せました。一度は先頭に立つ勢いを見せましたが、ゴール前で内から追い込んできたクイーンズリングにわずかに及ばずクビ差の2着。GIタイトルには手が届きませんでしたが、人気以上の激走で能力の高さを改めて証明しました。

5歳（2017年）

更なる飛躍が期待された5歳初戦は、古馬混合のGIIレース、アメリカジョッキークラブカップに出走しました。ここでは4番人気に支持され、引き続きルメール騎手が騎乗。レースは先行せず、中団で進めました。しかし、最終コーナーで馬群が密集する中、バランスを崩すシーンがあり、ルメール騎手が立て直しました。ですが、直線に入ってすぐ、前を走る馬に接触したと見られる事故が発生。シングウィズジョイは転倒し、競走を中止しました。落馬したルメール騎手は打撲などの怪我を負いましたが、命に別状はありませんでした。一方、シングウィズジョイは左上腕骨の複雑骨折と診断され、回復の見込みがない「予後不良」と判断されたため、その場で安楽死の措置が取られました。GIでの好走から期待が高まっていた中での突然の悲劇は、多くの関係者やファンに深い悲しみを与えました。

血統背景

シングウィズジョイの血統を遡ると、優れた牝系が繋がっています。母シングライクバードはオープンクラスまで出世し、エリザベス女王杯への出走経験も持ちます。さらに母の母（祖母）シングライクトークは7勝を挙げオープン馬となり、重賞でも2度の2着に入る活躍を見せました。そして、その母（曾祖母）であるフリートークは、フラワーカップやクイーンステークスといった重賞を制覇し、桜花賞3着、オークス4着とクラシックでも好走した名牝でした。怪我により早期引退を余儀なくされた曾祖母フリートークと同様に、シングウィズジョイもまた不慮の事故により短いキャリアを終えることになったのは、なんとも皮肉な運命と言えるかもしれません。

短い競走生活ではありましたが、重賞を2勝し、GIでも僅差の勝負を演じるなど、ターフに確かな輝きを残したシングウィズジョイ。その勇姿と、突然訪れた悲劇的な最期は、今も競馬ファンの心に深く刻まれています。

もう一度検索