シンシロ

アルバム「シンシロ」の概要

『シンシロ』は、日本のロックバンドサカナクションによって2009年1月21日にリリースされたスタジオ・アルバムである。このアルバムは、彼らのフロントマンである山口一郎が作詞・作曲を手がけており、ビクターエンタテインメントからリリースされた。タイトルの「シンシロ」は、「新色の白」という意味を持ち、新たな音楽性への挑戦を象徴している。

背景と制作経緯

このアルバムは、前作『NIGHT FISHING』の制作から続く形で行われたが、大きな変化として札幌から東京への拠点移動がある。この移転は、前作リリース後に多くのマネジメント会社からオファーを受けた結果であり、特にヒップランドとの契約を通じて実現した。彼らは「外に発信しなければならない」との言葉を受け、より多くのリスナーに届く音楽を目指す決意を固めた。バンドはこの機会に兼業していた職を辞め、音楽活動に専念することになり、これにより彼らは音楽制作にかける時間を大幅に増やすことが可能になった。

制作においては、それぞれのメンバーが楽曲のデモ音源を個別に編曲し、各自のスタイルを反映させることが試みられた。そうしたアプローチにより、アルバム全体が一体感を持ちながらも、多様な音楽性が際立つ作品になっている。また、「雑踏」は以前からのデモに基づいており、アルバム収録に当たってはほとんど手を加えられずに収められた数少ない楽曲の一つである。一方で、楽曲「アドベンチャー」は、本来先行シングルとして考えられていたが、最終的には「セントレイ」がその地位を得ることになった。

アルバムタイトルの由来

「シンシロ」と名付けられた背景には、バンドが持っていたスケッチブックを白紙に戻し、「新しい白」を創出しようという思いが込められている。このアルバムでは、ジャケットアートワークをアートクリエイティブ集団のhatosが手掛け、タイトルの音をデザインに表現した。アートは言葉の持つ波紋を映し出す形式になっている。

プロモーションとリリース

アルバムはリリース前に2曲の先行シングルが販売された。2008年12月10日にリリースされた「セントレイ」と、2009年2月9日に配信された「ネイティブダンサー」がそれである。「ネイティブダンサー」は、監督の児玉裕一によるプロモーション・ビデオが制作され、コンセプチュアル・ビデオ賞を受賞したことでも話題となった。

アルバムリリースを記念したライブツアー『SAKANAQUARIUM 2009“シンシロ”』も開催され、全国各地での公演が行われた。特に札幌でのパフォーマンスは彼らの地元への帰還を象徴する重要なステージとなった。また、国際的な側面では2009年に韓国で行われたロックフェスティバルにも出演し、彼らの音楽が国内外で認知される一助となった。

評価とチャート成績

アルバム「シンシロ」は、音楽評論家から賛否の評価を受けた。音楽雑誌『VIBE』や『CDJournal』を始めとする多くの媒体で肯定的なレビューが寄せられ、その完成度や独自性が称賛された。一方で、アレクセイ・エレメンコは、ASIAN KUNG-FU GENERATIONとの比較を行い、全体的に軽快すぎるとの指摘を行った。しかし、総じてアルバムは楽曲が整然としており、サカナクションの進化したサウンドが楽しめる一枚と評価されている。オリコンにおける販売記録でも、初週に1万2,000枚を売り上げるなど、彼らの商業的成功を示すものとなった。

まとめ

以上のように、『シンシロ』はサカナクションにとって転機をもたらした記念すべきアルバムであり、音楽的な探求と成長が色濃く反映された作品である。彼らの取り組みにより、今後の音楽活動への期待も高まるばかりだ。

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