ジアルジア症

ジアルジア症 (giardiasis)

ジアルジア症は、ランブル鞭毛虫（Giardia lamblia）が原因となる寄生虫病です。この病気は汚染された食品や水を介して感染し、特にヒトやさまざまな哺乳類の消化管で増殖します。ジアルジア症は人獣共通感染症であり、国内外で広く見られる感染症です。本稿では、特に人における感染およびその症状、感染経路、予防策について詳述します。

主な特徴

ジアルジア症の代表的な症状には、下痢、腹痛、鼓腸、膨満感、疲労、吐き気、嘔吐、体重減少などがあります。感染後、通常は7日から10日間の潜伏期間を経て発症し、症状は約2～4週間続くことが一般的です。しかし、特に乳糖不耐症の人は症状が6ヶ月以上続くこともあります。また、発症していなくても無症状キャリアとして感染を広げるケースも多く見られます。治癒は自然に進むことが多いですが、免疫力が低い人々では慢性化することがあり、胆嚢や胆管に関連する合併症が生じることもあります。

疫学的背景

ジアルジア症は、世界中に存在する一般的な感染症であり、特に熱帯地域や亜熱帯地域で感染者が多いです。感染率は国によって異なりますが、一部の国では20%を超えることもあり、全世界で約2億人が感染していると推定されています。近年では、特にインド周辺への旅行者に多く見られ、旅行者下痢症の一因となっています。また、日本では年間約100例の感染事例が報告されており、そのほとんどが海外での感染によるものです。

感染経路

ジアルジア症は主に糞口経路で広がりますが、特に感染者や汚染された食品からの感染が一般的です。少人数の接触から発生する小規模な集団感染や、大規模な飲料水を介した感染もよく知られています。一見きれいに見える水源でも、感染のリスクはありますので注意が必要です。例えば、キャンプの際に渓流の水を生で飲むことは危険です。さらに、動物の糞便を介しても感染するため、ペットやその他の動物からの感染も考慮する必要があります。

予防策

ジアルジアのシストは湿潤環境で非常に長く生存し、塩素処理にもある程度抵抗があります。そのため、飲料水の浄化にはフィルタリングや煮沸が推奨されています。ただし、単に水を汲み置きするだけでは不十分です。熱処理には弱く、60℃で数分加熱することで死滅させることができます。従って、食材を扱う際や水を使用する際には細心の注意を払うべきです。

診断と治療法

ジアルジア症の診断は、便から病原体を検出することで行われます。症状が出ている場合、多くの人は水っぽい下痢を経験します。治療には抗原虫薬が使用されますが、無症状者からのシストの排出も重要な感染源と見なされています。

他動物への影響

人間以外でも感染が確認されていますが、特に犬は感染しやすいです。犬舎では、感染した犬を特定して隔離することが推奨されており、感染拡大を防ぐための対策が必要です。仔ウシやチンチラは重篤な症状を示す場合もあり、注意が求められます。

まとめ

ジアルジア症は多くの地域で見られる比較的一般的な感染症であり、特に旅行者や免疫が低下している人々にとって注意が必要です。適切な予防策を講じ、感染が疑われる場合は速やかに医療機関に相談することが重要です。

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