ランブル鞭毛虫

ランブル鞭毛虫について

概要

ランブル鞭毛虫（Giardia duodenalis）は、ディプロモナス目ヘキサミタ科に属する寄生性の単細胞生物です。哺乳類の消化管に寄生し、特に影響を及ぼすのがヒトのジアルジア症（giardiasis）です。一般にヤツヒゲハラムシとも呼ばれ、世界中に分布しています。

形態

この虫の栄養型は、前部が丸みを帯び、後部が細長いため、洋梨の形に似ています。大きさは体長12–15μm、幅5–9μm程度です。特徴として、前方には核小体のない二つの核があり、二つの核は同一の形態を持ち、等量のDNAを含んでいます。この二つの核の間には生毛体があり、そこからは8本の鞭毛が出ています。鞭毛は体の外へと伸び、ははく進むのに利用されます。また、腹側の前半は吸着円盤となっており、小腸上部の内壁にしっかりと吸着します。

栄養型はミトコンドリアを持たず、代わりにマイトソームと呼ばれる器官が存在します。これもまた、その機能については完全には理解されていません。栄養型は消化管内での栄養吸収や無性生殖（縦二分裂）を行いますが、有性生殖は観察されていません。

また、シスト（嚢子）についても触れておくと、これは大体8μmの楕円形で、4つの核を持ち、特有の曲刺構造が見られます。

生態

ランブル鞭毛虫はヒトの消化管以外にも、牛やビーバー、鹿、犬、羊など、さまざまな哺乳類に寄生します。特にネコにも寄生することが知られています。ヒトに感染すると、主に十二指腸や空腸の上部に寄生し、場合によっては胆嚢にも影響を及ぼすことがあります。

この虫の感染は、感染宿主の糞便に含まれるシストを経口摂取することから始まります。シストは消化器を通過し、栄養型が形成され、そこから摂食と運動が始まります。栄養型は腸内の粘膜を破壊するため、みぞおちの痛みやガスの増加、脂肪や粘液を含む下痢（血液を含まない）を引き起こします。シストは核分裂の後に細胞分裂を起こさず4つの核を持つ形態に変わり、その後糞便として排出されます。

ゲノム

ランブル鞭毛虫のゲノムは、約12Mbp（メガ塩基対）で構成され、5本の線状染色体があります。各染色体の末端にはテロメアが存在し、染色体の大きさは安定していないと考えられています。特筆すべきは、有性生殖が認められない状況においても、ヘテロ接合度が非常に低いということです。

ジアルジア症

ランブル鞭毛虫が引き起こすジアルジア症は、激しい下痢と腹痛を伴う消化器疾患です。特に熱帯・亜[[熱帯]]地域では広く見られ、感染率は1-2割に達することがあります。症状は、腹部の痛みに加えてガスの発生といったものが挙げられます。

分類と研究史

ランブル鞭毛虫は、これまで様々な分類が行われてきましたが、最近の分子系統解析によって、Assemblage AからHまでの8つの遺伝子型が識別されています。また、歴史的にはランブル鞭毛虫に関連する様々なシノニム名が干渉しましたが、現在ではこれらは適切に整理されています。

この寄生虫は1681年に初めて発見され、後の研究によってその特性が明らかにされました。現代の顕微鏡技術を活用した研究により、その観察が可能であることも立証されています。

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