ジェイムズ・G・ベイカー

ジェイムズ・G・ベイカー：天文学と光学技術のパイオニア

ジェイムズ・ギルバート・ベイカー (1914年11月11日 - 2005年6月29日) は、アメリカ合衆国を代表する天文学者にして光学技術者です。ケンタッキー州ルイビル生まれ。ルイビル大学で数学を専攻し、学生時代から天文学への強い関心を抱き、ルイビル天文学会の設立にも参加しました。同大学卒業後、ハーバード大学天文台で研究を始め、1940年にはシュミット式望遠鏡を改良した画期的なベイカー・シュミット式望遠鏡を開発しました。この業績は、天文学における観測技術に大きな進歩をもたらしました。

第二次世界大戦中は、航空偵察部門の光学研究員として、広角カメラシステムの設計に携わりました。戦後は空軍写真研究所の顧問研究員を務め、その後もハーバード大学やリック天文台で研究活動を続けました。

ベイカーの功績は、天文学の観測技術にとどまりません。世界初の人工衛星スプートニク1号の打ち上げ時には、ジョセフ・ナンとともにベイカー＝ナンカメラを設計、開発しました。このカメラは人工衛星の軌道を高精度に追跡するために開発された光学システムで、世界各地の天文台に設置され、人工衛星観測に革命を起こしました。日本でも、東京天文台三鷹観測所、後に堂平観測所に設置され、長年にわたって活躍しました。

さらに、ベイカーはエドウィン・ランドとともに、U-2偵察機の開発を推進するなど、軍事技術への貢献も著しいです。U-2偵察機やSR-71偵察機に搭載されるカメラやレンズの設計にも参加し、これらの技術は後の軍事偵察衛星計画サモスにも応用されました。これらの技術は、月面地図の作成にも役立てられています。

ベイカーは光学技術への貢献も高く評価されており、アメリカ光学学会の理事長を務めたほか、ポラロイドカメラSX-70の設計や流星追跡のためのベイカー・スーパー・シュミット・カメラの開発など、数々の革新的な技術を生み出しました。コンピュータを光学技術に応用した先駆者としても知られています。また、アメリカ合衆国において50を超える特許を取得しており、その技術者としての力量の高さがうかがえます。数多くの技術論文を発表したことも特筆すべき点です。

晩年はニューハンプシャー州ベッドフォードで過ごし、2005年に90歳で生涯を閉じました。その業績は、天文学、光学技術、そして軍事技術の分野において、今もなお高く評価され、現代の科学技術の発展に大きな影響を与え続けています。

受賞歴

1962年 エリオット・クレッソン・メダル
1965年 フレデリック・アイヴズ・メダル
1978年 国際光工学会ゴールドメダル

主な業績

ベイカー・シュミット式望遠鏡の開発
ベイカー＝ナンカメラの開発
U-2偵察機、SR-71偵察機用カメラ・レンズの設計
ポラロイドカメラSX-70の設計
ベイカー・スーパー・シュミット・カメラの設計

ベイカーは、妻のエリザベスとの間に3人の息子と1人の娘をもうけ、5人の孫に恵まれました。彼の功績は、単なる科学技術の進歩にとどまらず、家族を大切にする人間性にも裏付けられた、偉大な生涯であったといえるでしょう。

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