リック天文台

リック天文台：世界初の山頂天文台から現代天文学へ

カリフォルニア州サンノゼ東部、ディアブロ山脈のハミルトン山頂に位置するリック天文台は、カリフォルニア大学が所有・運営する天文台です。1887年の設立は、世界で初めて山頂に建設された天文台という歴史的意義を持ちます。ジェームズ・リックの遺産を基に建設されたこの天文台は、当初から優れた観測環境を誇っていました。

建設計画と困難

天文台の建設は容易ではありませんでした。まず、建設資材を山頂へ運ぶための道路建設が必要でした。急峻な山道を考慮し、勾配6.5%以下に抑えるため、非常に曲がりくねった道路が造られ、そのカーブの数は365個にも及びます。現在でもこのルート（カリフォルニア州道130号線）が使用されており、降雪時には閉鎖されます。

建設には困難が伴いましたが、完成した天文台は、当時世界最大の口径36インチ(91.44cm)屈折望遠鏡を擁し、1888年1月3日のファーストライト以来、1897年にヤーキス[[天文台]]が建設されるまでその座を守りました。1888年4月にはカリフォルニア大学評議会によって大学施設として認められ、世界初の常設山頂天文台としてその歴史を刻みます。ハミルトン山頂は、市街地からの光害や大気汚染の影響を受けにくく、夜間の大気ゆらぎも少なく、霧が発生しやすいサンフランシスコ・ベイエリアの霧よりも高い位置にあるため、麓の光害が霧によって遮られるという、観測に理想的な環境を備えていました。

光害との戦い、そして発展

サンノゼやシリコンバレーの発展に伴い、光害は大きな課題となりました。1970年代には、より光害の少ない場所への移転案も検討されましたが、財源確保の困難から実現しませんでした。しかし、サンノゼ市は1980年から光害低減計画を開始、街灯を低圧ナトリウム灯に交換するなど積極的に対策を講じました。この努力の結果、リック天文台は現在も主要な観測拠点として活動を継続しています。その貢献は国際天文学連合による6216番小惑星への「San Jose」命名という栄誉にもつながりました。

現在、リック天文台には23家族が居住し、UCSCの学生のための寮も完備されています。天文台職員とその家族からなる小さな町には、警察署や郵便局も存在するほどです。

輝かしい発見の数々

リック[天文台]]は、数々の天体発見で天文学に大きく貢献しています。主な発見としては、木星の衛星（アマルテア、エララ、ヒマリア、シノーペ）、太陽系外惑星（アンドロメダ座υ星、かに座55番星、HD 38529、HD 12661、GJ 876、おおぐま座47番星など）、そして地球近傍[[小惑星] 1950 DAなどが挙げられます。多くの発見は、ケック天文台やホイップル天文台など他の天文台との共同研究によるものです。

最新の観測装置

リック天文台には、様々な観測装置が設置されています。シェーン3m反射望遠鏡、リック0.9m屈折望遠鏡、カーネギー0.5m双眼屈折望遠鏡、ニッケル1m反射望遠鏡、クロスレー0.9m反射望遠鏡、自動惑星検出望遠鏡など、時代を反映した多様な機器によって観測研究が進められています。これらの装置は、ハミルトン山頂の異なる場所に設置され、それぞれが天文学研究に重要な役割を果たしています。

リック天文台は、歴史と伝統を誇る天文台として、現代天文学の最前線で活躍を続けています。今後も、宇宙の謎解明に大きく貢献していくことが期待されます。

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