ジェットF104脱出せよ

1968年に製作された日本のアクション映画『ジェットF104脱出せよ』は、航空自衛隊の全面的なバックアップを得て制作された意欲作です。村山三男が監督を務めたこの作品は、若き航空自衛官たちが一流のパイロットを目指して奮闘する姿を、厳しくもリアルな訓練風景を交えながら描き出しています。当時の日本映画としては珍しく、航空自衛隊の協力によって、劇中に登場する航空機は全て実際の機体が使用されており、迫力ある映像が大きな特徴となっています。作品名は、当時航空自衛隊の主力戦闘機であったロッキードF-104「スターファイター」に由来し、その機体を使った訓練や、万が一の事態にパイロットが行う緊急脱出の重要性を暗示しています。

物語の概要

この映画の主人公は、海津士郎、篠田正美、郷原克彦、坂本三郎、田代隆雄といった、将来の航空自衛隊を担う飛行幹部候補生たちです。彼らは、日本の各地に所在する航空自衛隊の基地を舞台に、パイロットとなるための非常に過酷な訓練課程に身を投じます。訓練は肉体的、精神的な限界を試すものであり、候補生たちはそれぞれの理想や葛藤を抱えながら、試練の日々を送ります。

訓練の現実は容赦なく厳しく、全ての候補生が最後まで残れるわけではありません。訓練の重圧に耐えきれず、自らの意思で自衛隊を離れる者や、訓練飛行中に不慮の事故に遭遇し、志半ばで命を落としてしまう仲間も現れます。そうした厳しい現実、そして仲間の脱落や喪失を経験しながらも、残された候補生たちは互いに支え合い、絆を深め、困難を乗り越えていきます。彼らは、友情、ライバル関係、そして大空への強い憧れを胸に、一人前のパイロットとして、人間として大きく成長していくのです。

作品の特徴

本作の最大の魅力は、航空自衛隊の全面協力によって実現した圧倒的なリアリティにあります。劇中に登場する航空機は全て本物が使用されており、当時の最新鋭機であったロッキードF-104スターファイターをはじめ、様々な機体がその勇姿を見せています。

登場する主な航空機：
ロッキード F-104 スターファイター
T-34 メンター
T-33 シューティングスター
富士 T-1 初鷹
F-86 セイバー
シコルスキー S-62

これらの機体が登場する飛行シーンや訓練の描写は、自衛隊の実際の活動に基づいたものであり、当時の観客に強いインパクトを与えました。また、撮影は実際の航空自衛隊の基地で行われました。

撮影が行われた主な基地：
芦屋基地（福岡県）
浜松基地（静岡県）
千歳基地（北海道）
新田原基地（宮崎県）

これらの基地の広大な敷地や格納庫、滑走路などが映画の舞台として効果的に使用され、作品の世界観をより一層引き立てています。

キャスト

映画を彩るキャスト陣も魅力の一つです。主人公の海津士郎を演じたのは倉石功。彼と共に厳しい訓練に挑む候補生たちを、郷原克彦役に酒井修、篠田正美役に青山良彦、坂本三郎役に高見国一、田代隆雄役に平泉征といった若手俳優が演じました。彼らを時に厳しく、時に温かく見守る教官や上官役には、宇津井健（渡辺二等空佐役）、夏木章（山崎三等空佐役）、藤山浩二（矢代二等空尉役）など、当時の映画やテレビドラマで活躍していた実力派俳優が多数出演し、物語に深みを与えています。また、候補生の一人として、俳優の篠田三郎も出演しています。

結び

『ジェットF104脱出せよ』は、航空自衛隊という特殊な世界を舞台に、若者たちの夢、挫折、友情、そして成長を描いた青春アクション映画です。航空自衛隊の全面協力による迫真の映像は、当時の日本映画としては画期的な試みであり、そのリアリティは現在でも見どころの一つとなっています。当時の社会情勢や、日本の防衛に対する意識を垣間見ることができる資料的な側面も持ち合わせています。公開時には、『陸軍中野学校 開戦前夜』と併映されました。

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