シコルスキー S-62

シコルスキー S-62の概要

シコルスキー S-62は、単発の1軸ローター式ヘリコプターで、アメリカ沿岸警備隊や海上自衛隊、航空自衛隊によって救難機として広く運用されました。民間では輸送用としても非常に活躍しました。このヘリコプターは、S-55のダイナミック・コンポーネントを多く再利用し、S-61の縮小版と位置づけられています。

機体デザインの特長として、舟型に成形された底面があり、水上での離着陸が可能です。また、搭載されているエンジンはゼネラル・エレクトリック T58-GE-8で、出力は1,250 hp（930 kW）。配備が単発のため、機体はコンパクトであるものの、強力なエンジンにより、S-55よりも高い速度と優れた積載性能を誇ります。

アメリカ沿岸警備隊による運用

アメリカ沿岸警備隊は、S-62Cを導入し、初期にはHU2S-1Gという名称で運用していましたが、1962年にはHH-52A シーガードとして正式に採用されました。このモデルは99機が製造され、長期にわたり信頼性の高い救難ヘリコプターとして使用されましたが、1985年からは後継機のHH-65 ドルフィンが導入され、徐々に退役していきました。特に、アイスランドに輸出された1機もその運用の一環です。

日本での活躍

日本では1963年から1983年にかけて航空自衛隊が9機を運用。また、海上自衛隊も1965年から1986年まで9機を使用しました。これに関連して、三菱重工業が1961年から1970年の間に計25機をノックダウン生産しました。このうち7機は民間向けに販売されています。

具体的には、民間の朝日ヘリコプターが使用した機体が、富士山レーダーの建設時にその性能を発揮し、NHKの『プロジェクトX』でも取り上げられました。フィリピンへの戦争賠償の一環により、2機がフィリピン空軍に納品され、大統領専用機としても利用された歴史があります。これらの機体も、単発機ならではの特性から1975年に運用終了を迎えましたが、1機はフィリピン空軍航空博物館で現在も展示されています。

バリエーション

• - S-62：プロトタイプで、1958年5月22日に初飛行。
• - S-62A：水陸両用型の輸送ヘリコプターで、ゼネラル・エレクトリックCT58-110-1ターボシャフトエンジン搭載、11名の輸送が可能。
• - S-62B：S-58のメインローターシステムを使用した特別な機体で、1機のみ製造。
• - S-62C：アメリカ沿岸警備隊向け。
• - HU2S-1G：HH-52A シーガードの初名称。名称は1962年にHH-52Aに変更。
• - HH-52A シーガード：捜索救難ヘリコプターで、99機が製造され、1機がアイスランドに輸出。

諸元

• - 乗員：3名
• - 全長：13.58m
• - 全高：4.33m
• - ローター直径：16.15m
• - 空虚重量：2,248kg
• - 有効搭載量：1,382kg
• - 最大離陸重量：3,630kg
• - 動力：ゼネラル・エレクトリック T58-GE-8ターボシャフトエンジン

映画への登場

このヘリコプターは映画作品にも登場しています。『ジェットF104脱出せよ』では新田原救難隊所属のJ型が出動し、主人公の救助活動を行います。『戦国自衛隊』では、陸上自衛隊のヘリコプターとしてフィクションの中に位置づけられ、銃撃を行うシーンが描かれました。しかし、実際には陸上自衛隊では採用されていません。撮影に使用された機体は、特別な塗装が施され、その後も保存されています。

シコルスキー S-62はその性能や歴史的背景から、今なお多くの人々に記憶されています。

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