ジェラルド・アルブライト

ジェラルド・アルブライト（Gerald Albright）は、1957年 8月30日にアメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルスで誕生した、ジャズおよびフュージョン界を代表するサックス奏者です。彼はアメリカ西海岸シーンにおける重要なサックスプレイヤーの一人として認識されており、その卓越したテクニックと表現力豊かなサウンドは世界中のファンを魅了しています。

アルブライトの音楽キャリアは、サックスだけでなく、多様な楽器への深い理解に支えられています。メイン楽器はもちろんサックスですが、キーボードやベース、さらにはプログラミングも手がけ、自身の作品ではバックコーラスも取り入れるなど、マルチプレイヤーとしての才能も発揮しています。

音楽への道

幼少期はピアノを学んでいましたが、師事していた先生からサックスを譲り受けたことが転機となり、その後の音楽活動の主軸をサックスへと移しました。大学ではビジネスを専攻しつつ、音楽を副専攻として学び、理論と実践の両面から音楽性を磨きました。また、ベーシスト、ルイス・ジョンソンのパワフルなライブパフォーマンスに触発され、ベースギターも手にするようになります。

大学卒業後、彼はファンクやR&B界で知られるパトリース・ラッシェンのバンドに加入しました。ラッシェンの代表的なヒット曲である「Forget Me Not」では、彼の情感あふれるサックスプレイを聴くことができます。さらに、バンドのツアー中にベーシストが一時的に不在となった際には、彼自身がベースとサックスの両パートをこなすという、類まれな才能と適応力を見せました。

華麗なる共演歴とソロ活動

ジェラルド・アルブライトの演奏は、ジャンルを超えて多くの著名アーティストに求められました。セッションミュージシャンとして参加したレコーディングやツアーは数多く、その共演者リストにはフィル・コリンズ、クインシー・ジョーンズ、アニタ・ベイカー、オリヴィア・ニュートン・ジョン、テンプテーションズ、モーリス・ホワイト、ホイットニー・ヒューストンといった伝説的なミュージシャンたちが名を連ねます。

また、ウィル・ダウニング、ジョナサン・バトラー、ヒュー・マセケラ、チャカ・カーンといったコンテンポラリージャズ界の実力派アーティストたちとの共演を通じて、その評価を確固たるものとしました。特にウィル・ダウニングとは旧知の仲であり、共作アルバム『プレジャーズ・オブ・ザ・ナイト』を発表するなど、緊密な音楽的連携を見せています。

彼の多岐にわたる活動は音楽業界にとどまりません。1997年にコナミから発売されたPlayStation用ゲームソフト『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』のエンディングテーマ「I am the wind」（ボーカル：シンシア・ハレル、作曲・アレンジ：ジェフ・ローバー）では、サックス演奏を担当しており、その柔軟な音楽性はゲーム音楽の世界にも及んでいます。

ソロアーティストとしては、1987年にアトランティック・レコードからアルバム『ジャスト・ビトゥイーン・アス』でデビューを飾りました。以来、精力的にリーダーアルバムの制作・発表を続け、多くの作品を世に送り出しています。彼はアトランティック・レコードの後、GRPレコードに移籍し、『グルーヴォロジィ』（2002年）や『キックイン・イット・アップ』（2004年）といったアルバムをリリースしました。2005年にはリッピントンズのラス・フリーマンが主宰するピーク・レコードへ移り、『ニュー・ビギニングス』を発表。2008年の『サックス・フォー・スタックス』では、スタックス・レコードへのトリビュートを捧げました。その後もヘッズ・アップ・インターナショナルやコンコードなど様々なレーベルから作品を発表しており、2012年にはギタリストのノーマン・ブラウンとの共作アルバム『24/7』をリリースするなど、常に新たな音楽的挑戦を続けています。

音楽活動に加え、テレビ出演なども果たすなど、メディアを通じた活動も行っています。政治的な舞台との関わりもあり、ビル・クリントン元大統領の就任式で演奏を行った10名のサックス奏者の一人という栄誉にも輝いています。これは、彼の演奏家としての地位の高さを示すエピソードと言えるでしょう。

ジェラルド・アルブライトは、その卓越した演奏技術と幅広い音楽性で、ジャズ・フュージョンシーンにおいて不動の地位を築いています。彼の奏でるサックスの音色は、これからも多くの人々に感動を与え続けることでしょう。

ディスコグラフィ（抜粋）

スタジオ・アルバム
『ジャスト・ビトゥイーン・アス』 - Just Between Us (1987年)
『バミューダ・ナイツ』 - Bermuda Nights (1988年)
『ドリーム・カム・トゥルー』 - Dream Come True (1990年)
『スムース』 - Smooth (1994年)
『プレジャーズ・オブ・ザ・ナイト』 - Pleasures of the Night (1998年) ※with ウィル・ダウニング
『グルーヴォロジィ』 - Groovology (2002年)
『ニュー・ビギニングス』 - New Beginnings (2006年)
『サックス・フォー・スタックス』 - Sax for Stax (2008年)
24/7 (2012年) ※with ノーマン・ブラウン
『サーティー』 - 30 (2018年)
ライブ・アルバム
『ライヴ・アット・バードランド・ウエスト』 - Live at Birdland West (1991年)
コンピレーション・アルバム
* The Very Best of Gerald Albright (2001年)

もう一度検索