ジェリコ・ラジュナトヴィッチ

ジェリコ・ラジュナトヴィッチ（アルカン）の生涯

ジェリコ・ラジュナトヴィッチ（通称アルカン）は、1952年4月17日にユーゴスラビア（現スロベニア）で生まれ、2000年1月15日に暗殺された、セルビアの民兵組織「アルカン・タイガー」のリーダーです。彼はユーゴスラビア紛争における戦争犯罪で告訴され、その生涯は犯罪と政治、そして戦争が複雑に絡み合ったものでした。

生い立ちと犯罪歴

アルカンは、軍人の父と共産主義活動家の母のもと、厳格な家庭で育ちました。幼少期から家出を繰り返し、1972年には西ヨーロッパへ不法越境し、犯罪活動に手を染めます。偽造パスポートを使用し、「アルカン」をニックネームとして使い始めました。ベルギー、スウェーデン、オランダ、オーストリア、ドイツ、スイス、イタリアなどで強盗、殺人、襲撃などの犯罪に関与し、ヨーロッパ各地の刑務所で脱獄を繰り返しました。

1973年からはユーゴスラビアの秘密警察UDBAのエージェントとして、政治亡命者や反体制派の暗殺に従事。複数の言語を操り、その語学力を生かして暗躍しました。1981年にユーゴスラビアに帰国後も犯罪活動を続け、1983年には逮捕しようとした警察官を射殺する事件を起こしています。

ユーゴスラビア紛争での役割

1990年代に入り、民族間の緊張が高まると、アルカンはセルビア義勇親衛隊（アルカン・タイガー）を設立しました。この組織は、レッドスター・ベオグラードのフーリガンを中心に構成され、ユーゴスラビア人民軍の支援を受けました。1991年には、クロアチアからの独立を阻止しようと活動中に逮捕されましたが、釈放されています。

アルカン・タイガーは、クロアチア紛争やボスニア・ヘルツェゴビナ紛争で戦闘に参加し、数々の戦争犯罪に関与したとされています。戦車やヘリコプターを含む現代兵器で武装し、1万人規模の兵力を擁していました。

戦後の活動と影響力

1995年のデイトン合意後、アルカンはサッカークラブFKオビリッチを買収し、ユーゴスラビア・プルヴァ・リーガで優勝を果たしました。しかし、相手選手への脅迫など、数々の不正行為が指摘され、欧州サッカー連盟から国際大会出場を禁止される可能性も浮上しました。アルカンは石油や貴金属の密輸などにも関与し、ビジネスを拡大していきました。

また、当時のユーゴスラビア大統領スロボダン・ミロシェヴィッチと密接な関係を築き、その下で活動していました。コソボ紛争が勃発すると、再び民兵組織を率い、コソボ解放軍と戦いました。旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷からは、虐殺、民族浄化、人道に対する罪で起訴されました。

暗殺とその後

2000年1月15日、アルカンはベオグラードのホテルで暗殺されました。犯人は警察官であり、アルカンは病院に搬送されたものの死亡しました。アルカンの暗殺は、セルビア社会に大きな衝撃を与え、その死をめぐっては賛否両論が巻き起こりました。民族派からは英雄視される一方で、その犯罪行為を糾弾する声も根強くありました。

アルカンを殺害した犯人は、裁判で有罪と認定されましたが、事件の背景には、石油密輸を巡る確執やマフィア同士の抗争など、様々な憶測が飛び交いました。

人物像

アルカンは、5人の女性との間に9人の子供をもうけました。2番目の妻は、人気歌手のツェツァ（スヴェトラーナ・ヴェリチュコヴィッチ）であり、結婚式はテレビ中継されるほどでした。アルカンの生涯は、セルビアの近現代史における暗部を象徴する出来事として、今もなお議論の対象となっています。

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