ジェリー・スローン

ジェリー・スローン：不屈の魂でチームを勝利に導いた名将

ジェリー・スローン（Gerald Eugene Sloan、1942年3月28日 - 2020年5月22日）は、アメリカ合衆国出身の元プロバスケットボール選手であり、卓越した手腕で知られるヘッドコーチです。NBAのシカゴ・ブルズとユタ・ジャズという名門チームを率い、リーグ歴代3位となる1221勝という輝かしい記録を打ち立てました。2009年には、バスケットボール殿堂入りを果たし、その功績は永遠に称えられています。

生い立ちと選手時代：ディフェンスの名手として

イリノイ州ハミルトン郡で生を受けたスローンは、エヴァンズビル大学でバスケットボールの才能を開花させました。1965年、ボルチモア・ブレッツからNBAドラフト1巡目で指名を受け、プロとしてのキャリアをスタートさせます。翌1966年には、エクスパンション・ドラフトによって新チームのシカゴ・ブルズへ移籍。ブルズでは、その卓越したディフェンス能力を発揮し、チームに貢献しました。

オールスターには2回選出され、オールディフェンシブチームのファーストチームには4回、セカンドチームには2回選ばれるなど、守備の名手としてその名を轟かせました。ブルズでの通算得点は10,233点に達し、これはマイケル・ジョーダン、スコッティ・ピッペン、ボブ・ラブに次ぐチーム史上4位の記録です。また、通算リバウンド数は7.4を記録しています（キャリアハイは2年目の9.1）。

しかし、度重なる膝の怪我に悩まされ、1976年に現役引退を余儀なくされました。1978年には、その功績を称えられ、背番号4がブルズ史上初の永久欠番として登録されました。

コーチ時代：ブルズとジャズでの挑戦

ブルズでの苦闘

選手引退後、スローンはブルズのスカウト、アシスタントコーチを経て、1979年にヘッドコーチに就任しました。2年目にはチームをプレーオフに導きましたが、3年目は19勝32敗と低迷し、シーズン途中に解任されました。ブルズでの通算成績は94勝121敗でした。

ジャズでの栄光

その後、ユタ・ジャズのアシスタントコーチなどを務め、1988年にフランク・レイデンの後を継いでヘッドコーチに就任。ここから、スローンの輝かしいコーチキャリアが始まりました。90年代後半には、カール・マローンとジョン・ストックトンという二人のスター選手を中心としたチームを作り上げ、1997年、1998年と2年連続でNBAファイナルに進出しました。

しかし、ファイナルでは、奇しくもスローンがかつて在籍したシカゴ・ブルズが、マイケル・ジョーダンを中心に第二次黄金期を築いており、2度ともブルズに敗れ、優勝を果たすことはできませんでした。

スローンのチーム作りの特徴は、特定のスター選手に頼るのではなく、各選手がそれぞれの役割をしっかりとこなし、組織的なチームプレーを重視する点にありました。そのため、一人の選手の調子に左右されることなく、安定した力を発揮できるチームを作り上げることができました。50勝以上を記録したシーズンが10回を超えたコーチは、スローンとパット・ライリー、フィル・ジャクソン、グレッグ・ポポビッチの4人だけです。

2006-07シーズンには、NBA史上5人目となる通算1000勝を達成。2007-2008シーズンには、ジャズのヘッドコーチとして20年目を迎え、北米4大プロスポーツリーグにおける同一チーム連続コーチ記録を20年に更新しました。2008年11月7日には、NBA史上初となる同一チームでの通算1000勝を達成。2009年には、バスケットボール殿堂入りを果たし、その功績が永く称えられることとなりました。

2010-2011シーズンの途中、2月10日に、スローンはヘッドコーチを辞任しました。就任23シーズン目にして、「私の時代は終わった。情熱を失ってしまった」というコメントを残しています。辞任の前日には、チームの大黒柱であるデロン・ウィリアムスと激しい口論があったと報じられており、以前から二人の間に確執があったことが指摘されています。ウィリアムスがGMに対し、「俺を選ぶか、コーチのスローンを選ぶか」と圧力をかけたとも報じられましたが、ウィリアムスやGMはこれを否定しています。しかし、かつてスローンの下でプレーしたカール・マローンは、「情熱を失うとかで、シーズン途中で辞めるような人じゃない。きっと何かあったはずだ」と述べ、ジャズの選手やチーム関係者に対して不信感をあらわにしました。

スローンのNBA通算成績は1221勝803敗であり、これはNBA史上3位の記録です。その功績は、バスケットボール界に永遠に刻まれることでしょう。

もう一度検索