ジェンセン・ヒーレー

ジェンセン・ヒーレーの概要

ジェンセン・ヒーレーは、イギリスの自動車メーカーであるジェンセン・モーターズによって1972年から1976年にかけて製造された2座席のオープンスポーツカーです。このモデルは、アメリカの自動車販売業者であるジェル・クヴェールの手により誕生しました。クヴェールは1970年代に人気のあるイギリス製スポーツカーの一つであるオースチン・ヒーレー3000を手がけており、自らもスポーツカーを作りたいという夢を持っていました。

デザインと市場投入

1972年3月、ジェンセン・ヒーレーはジュネーブショーで初めてお披露目されました。デザインはジェフリー・ヒーレーによるもので、当時流行していたスタイルを反映した、やや没個性的な仕上がりでした。ボディサイズは、北米市場で人気が高まっていた初代日産・フェアレディZ（S30系）に近いもので、スポーツカーとしての存在感を際立たせていました。

エンジン性能

ジェンセン・ヒーレーの最大の特徴はそのエンジンにあります。初めはフォードやBMWのエンジンが試されたものの、最終的にはロータスによる16バルブ直4DOHCエンジン（LV220型）が選ばれました。このエンジンはボクスホール・ヴィクターのユニットをベースに新たに開発され、デロルト・ツインキャブを搭載したモデルでは142馬力を発揮。最高速度は195km/hに達し、そのパフォーマンスは卓越していました。このエンジンは後にロータスの他のモデルにも採用され、1970年代から1980年代にかけての基幹エンジンとなったのです。

機構と仕上がり

機械的な部分では、オーソドックスな設計がなされており、ギアボックスはサンビーム・レイピア用の4速が使用されました。サスペンションやステアリングはボクスホール・フィレンザから流用され、ブレーキはモーリス・マリーナといった量産車の部品を利用することでコストを抑えていました。しかし、初期モデルは「オーナーが仕上げるクルマ」と揶揄されるほどの完成度の低さも見受けられました。

日本市場における位置付け

日本向けのモデルは、米国仕様と同じくストロンバーグ製のツインキャブを装備し、若干のパワーダウンがあったものの、カーグラフィック誌のテストによると、最高速度185.56km/h、0-400m加速15.55秒、0-100km/h加速6.21秒と非常に高い性能を誇っていました。この数値はフェアレディZの240ZGと互角の競争力を持つものでした。

モデルの進化と終焉

1973年秋にはMk2型が登場し、サイドモールやウッドパネルが追加されるなど、豪華さが増しました。また、エアコンやハードトップオプションも装備可能になり、顧客ニーズに応えた改良が施されました。しかし、1973年の第一次石油危機が影響し、売上が落ち込んだことが響き、1975年には経営危機に陥り、最終的には1976年5月に倒産。総生産台数はMk1が3,356台、Mk2が7,142台、合計で10,498台に達しました。

当時、姉妹車としては2+2スポーツワゴンのジェンセン・GTも発表され、生産されましたが、こちらも操業中止までに509台と限られた数量でした。ジェンセン・ヒーレーは、短い生涯ながらも特異な存在感を放つ車両として、現在でも多くの自動車ファンの記憶に残っています。

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