ジェンティーレ・ベッリーニ

ジェンティーレ・ベッリーニ（Gentile Bellini, 1429年 - 1507年2月23日）は、イタリア・ルネサンス期、ヴェネツィア派を代表する画家の一人です。ヴェネツィアの美術は、フィレンツェに遅れて15世紀後半から開花し始め、ヴェロネーゼ、ティツィアーノ、ジョルジョーネ、ティントレットといった巨匠たちが活躍した16世紀に黄金時代を迎えました。ヴェネツィア派の特徴は、絵画における色彩の役割を重視し、豊かな色彩を用いて感情や雰囲気を表現することにあります。この点が、形態やデッサンを重視したフィレンツェ派とは大きく異なります。

また、ヴェネツィア派は、北方フランドルの影響を受け、早い時期からキャンバス画や油彩画が発達しました。ヴェネツィアの湿度の高さがフレスコ画の制作には不向きであったことも、この傾向を後押ししたと考えられています。

ジェンティーレ・ベッリーニは、ヴェネツィア派の初期に活動した画家一族の一員であり、父ヤーコポ・ベッリーニはヴェネツィア派の創始者とされています。また、弟のジョヴァンニ・ベッリーニも高名な画家として知られています。弟ジョヴァンニは、柔和な聖母子像で広く知られていますが、兄ジェンティーレもまた、油彩画の初期の発展に大きく貢献した重要な画家です。特に都市景観や群衆の描写に優れており、多くの肖像画も手がけました。代表作として知られるのは、スクオーラ・ディ・サン・ジョヴァンニ・エヴァンジェリスタ（福音書記者ヨハネの大同信会）のために描かれた「聖十字架」の連作です。

さらに、ジェンティーレ・ベッリーニは、オスマン帝国の首都イスタンブール（コンスタンティノポリス）へ赴き、当時のスルタン、メフメト2世の肖像画などを描いたことでも知られています。彼の作品は、初期油彩画の技術的な発展を示すとともに、当時のヴェネツィア美術の特徴を色濃く反映しています。

代表作

サン・ロレンツォ橋での十字架の奇跡（1500年頃）（ヴェネツィア、アカデミア美術館）
サン・マルコ広場の行列（1496年）（ヴェネツィア、アカデミア美術館）

これらの作品は、ジェンティーレ・ベッリーニの優れた描写力と、ヴェネツィア派の色彩感覚を堪能できるものとして、今日でも高く評価されています。

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