ジェームズ・ウォン (作詞家)

ジェームズ・ウォン（黄霑）は、20世紀後半の香港を代表するマルチクリエイターです。1941年、広東省広州生まれ。8歳で香港に移住し、幼少期からハーモニカバンドに参加するなど、音楽に親しむ環境で育ちました。香港の名門ラサール大学院卒業後、香港大学に進学し中国伝統音楽を研究する傍ら、作詞・作曲家、歌手、俳優として多方面で才能を発揮しました。

彼の音楽活動は多岐に渡ります。香港映画の主題歌を始め、数千曲にのぼる楽曲を手掛け、その作品群は香港社会に大きな影響を与えました。特に『プロジェクトA』の主題歌は、香港映画音楽史において『燃えよドラゴン』と並ぶ代表作として知られています。また、CMソングや流行歌の作詞・作曲も数多く担当し、香港のみならず世界中の華人社会で人気を博しました。李香蘭のリメイク盤のレコーディングに参加した経験を持つなど、音楽史に名を刻む数々の功績を残しました。

俳優としても活躍し、『ツイン・ドラゴン』など多くの作品に出演。父親役を演じる機会が多く、コミカルな演技から哀愁漂う表現まで、幅広い役柄をこなす個性派俳優として高い評価を得ていました。

さらに、コピーライター、CMクリエイター、プロデューサーとしても才能を発揮し、まさにマルチクリエイターとして活躍しました。香港ATVのバラエティ番組では司会を務め、番組中にゲストの小泉今日子をナンパするなど、奔放なキャラクターでも知られていました。結婚歴5回という私生活も、彼の個性的な魅力の一つと言えるでしょう。

彼の作品リストは、多作ぶりを物語ります。1970年代から2000年代にかけて、数多くの映画やテレビドラマの主題歌を手掛けました。代表作には、『Hotel』『近代豪俠伝』『死亡遊戯』『プロジェクトA』『男たちの挽歌』『チャイニーズ・ゴースト・ストーリーシリーズ』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ シリーズ』など、香港映画史に残る名作の主題歌が数多く含まれています。徐克監督作品とのコラボレーションも多く、その音楽は作品の世界観をさらに豊かに彩りました。

しかし、2004年11月24日、肺がんのため63歳で他界しました。彼の遺言により、葬儀は家族だけで密葬で行われました。

ジェームズ・ウォンは、香港エンターテインメント界に計り知れない貢献をしました。音楽、映画、そして広告業界にまたがる彼の多大な功績は、現在もなお人々の記憶に深く刻まれています。彼の生み出した楽曲や映像は、時代を超えて人々に感動を与え続け、香港文化の象徴として、これからも語り継がれていくことでしょう。彼の自由奔放な生き様と、類まれな才能は、後世のクリエイターたちに大きな影響を与え続けるでしょう。

もう一度検索