ジエチルスルフィド

ジエチルスルフィド

ジエチルスルフィドは、有機硫黄化合物の一つで、分子内に硫黄原子を一つ含みます。化学構造としては、硫黄原子に二つのエチル基（C₂H₅）が結合しており、硫黄を中心とした左右対称な分子構造（C₂H₅-S-C₂H₅）を持つことが特徴です。この種の構造を持つ化合物はスルフィド、あるいはチオエーテルと呼ばれており、ジメチルスルフィドやジブチルスルフィドなどがその仲間として挙げられます。

日本語ではジエチルスルフィドのほかに、ジエチルスルファイドやジエチルサルファイドといった呼称が用いられることもあります。英語表記では "diethyl sulfide" または "diethyl sulphide" となります。

性質

ジエチルスルフィドの分子式は C₄H₁₀S であり、分子量は 90.1872 です。

常圧における融点は -100℃と非常に低く、同じく常圧下での沸点は 90℃から 92℃の範囲にあります。このため、ジエチルスルフィドは室温（常温）および大気圧（常圧）のもとでは液体として存在します。この液体は、特徴的なニンニクに似た強い臭気を放ちます。

また、ジエチルスルフィドは可燃性の物質です。日本の消防法においては、危険物第四類第一石油類に該当し、その取り扱いには注意が必要です。

物理的なデータとして、25℃における密度は 0.837 g/ml であり、37.7℃における蒸気圧は 105 mmHg であることが知られています。

この化合物は、天然にも存在することが確認されています。例えば、熱帯の果物であるドリアンの特徴的な匂いを構成する成分の一つとして特定されています。また、日常的な食品であるジャガイモにも微量ながら含まれていることが報告されています。

化学物質としての識別番号である CAS登録番号は 352-93-2 です。

合成

ジエチルスルフィドは、主に工業的なプロセスにおける副生成物として得られます。具体的には、硫化水素（H₂S）とエチレン（C₂H₄）を原料とし、酸化アルミニウムなどを触媒として用いてエタンチオール（エチルメルカプタン、C₂H₅SH）を製造する際に、意図せず生成される化合物の一つです。

この合成プロセスにおけるジエチルスルフィドの生成量は、原料である硫化水素とエチレンの供給比率を調整することによって、ある程度の範囲で制御することが可能です。ただし、主目的であるエタンチオールの収率を最大化するための条件が選ばれるのが一般的です。

（出典に関する情報は省略します。）

上記のように、ジエチルスルフィドは特定の構造を持つ有機硫黄化合物であり、その物理的・化学的性質や天然における存在、さらには工業的な合成経路などが明らかにされています。特有の臭気と可燃性を持つことから、取り扱いには適切な注意が求められます。

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