ジギー・スターダスト・ツアー

ジギー・スターダスト・ツアーとは

ジギー・スターダスト・ツアーは、イギリスの革新的ミュージシャン、デヴィッド・ボウイが1972年から1973年にかけて敢行した、極めて影響力の大きい一連のコンサートです。このツアーは、彼のキャリアにおいて極めて重要な時期に発表されたアルバム、『ハンキー・ドリー』、『ジギー・スターダスト』、そして『アラジン・セイン』のリリースに合わせて行われました。

ツアーの特色と展開

このツアーの最大の特徴は、ボウイ自身が創造した架空のロックスターである「ジギー・スターダスト」というペルソナになりきってパフォーマンスを行った点にあります。宇宙から来たバイセクシャルのロックスターという設定のジギーは、当時の音楽界にセンセーションを巻き起こしました。

ボウイ演じるジギーは、彼のバックバンドである「ザ・スパイダーズ・フロム・マーズ」を率いて、母国イギリスに始まり、アメリカ合衆国、そして日本を含む世界各地を精力的に巡演しました。彼らのグラムロックを体現した強烈なサウンド、華やかな衣装、そして演劇的なステージングは、多くの聴衆を魅了し、熱狂的なファンを生み出しました。

ザ・スパイダーズ・フロム・マーズの中核を担ったのは、革新的なギタープレイでボウイサウンドに不可欠な存在となったミック・ロンソン（ギター、バッキング・ボーカル）、堅実なリズムを刻んだトレヴァー・ボルダー（ベース）、そしてパワフルなドラミングのミック・ウッドマンシー（ドラムス）でした。また、ツアー期間中にピアニストとしてロビン・ラムリー、ニッキー・グラハム、そして後にボウイとの長年のコラボレーションで知られるマイク・ガーソンなどが参加し、サウンドに彩りを加えました。

伝説となった終幕

ツアーは成功裏に進んでいましたが、その終焉は予期せぬ、そして劇的なものでした。1973年7月3日、ロンドンのハマースミス・オデオンで行われた最終公演のステージ上で、ボウイは突如、「このショーはツアーの最終日であるだけでなく、私たちの最後のショーでもある」と発言しました。これは、表向きには「ジギー」というキャラクター、そして「ザ・スパイダーズ・フロム・マーズ」としての活動に終止符を打つという意図だったと考えられますが、多くのメディアやファンには「デヴィッド・ボウイ自身の引退宣言」として受け止められ、世界中に衝撃を与えました。この劇的な「引退」劇は、彼のミステリアスなイメージを一層強固なものとし、彼のキャリアにおいて伝説的な瞬間となりました。

後世への遺産

ツアー最終日のハマースミス・オデオン公演は記録されており、その映像は後にドキュメンタリー映画『ジギー・スターダスト』として1983年に公開されました。同時に、このライブのサウンドトラック盤もリリースされ、ボウイの伝説的なパフォーマンスを後世に伝えています。さらに、1984年にはホームビデオとしてもリリースされ、より手軽にその姿を見られるようになりました。また、ツアー序盤にあたる1972年10月20日のサンタモニカ公演の録音も、後に『ライヴ・サンタ・モニカ '72』として2008年に公式リリースされ、ツアーの初期のエネルギーを知る貴重な音源となっています。

このツアーにおけるセットリストは公演ごとに変動しましたが、最終公演のセットリストは特に有名であり、当時の主要な楽曲群が演奏されました。

ジギー・スターダスト・ツアーは、単なる音楽コンサートの枠を超え、演劇、ファッション、アートが融合した総合的なパフォーマンスとして、その後のロックミュージックやポップカルチャーに計り知れない影響を与えたのです。

もう一度検索