ジム・ジェンタイル

ジム・ジェンタイル：栄光と苦難のプロ野球人生

ジェームズ・エドワード・ジェンタイル（James Edward "Jim" Gentile、1934年6月3日 - ）は、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ出身の元プロ野球選手（内野手）です。近鉄バファローズでの登録名は、愛称の「ジム」とファミリーネームの「ジェンタイル」をつなげたジムタイルでした。

メジャーリーグでの活躍

1952年にブルックリン・ドジャースと契約し、プロ野球選手としてのキャリアをスタートさせました。1956年11月には日米野球にドジャースの一員として来日し、当時2A所属ながらチーム最多の8本塁打を放つなど、その才能を垣間見せました。1957年9月10日にメジャーデビューを果たし、1960年にボルチモア・オリオールズに移籍すると、レギュラーの座を獲得。

1961年には、あの有名なロジャー・マリスと激しく打点王を争い、最終的には同じ141打点で打点王のタイトルを分け合いました。これは彼のキャリアにおけるハイライトの一つと言えるでしょう。その後、カンザスシティ・アスレチックス、ヒューストン・アストロズ、クリーブランド・インディアンスとチームを渡り歩きましたが、徐々に出場機会は減少していきました。

近鉄バファローズでの挑戦

1969年、ジムタイルは近鉄バファローズに入団します。当時の近鉄は万年最下位にあえいでおり、ジムタイルにかかる期待は非常に大きなものでした。しかし、長いプロ生活と太りすぎの影響から、彼の両足はすでに悲鳴を上げていました。開幕戦でいきなり膝を怪我するなど、故障と登録抹消を繰り返し、結局スタメン出場は12試合にとどまり、1年で解雇という結果に終わりました。

"本塁打を打って代走"という珍記録

ジムタイルは両足に爆弾を抱えて近鉄入りしたため、1969年シーズンは開幕戦で故障してからは代打での出場がほとんどでした。まともに走れる状態ではなかったため、本塁打を打った場合を除き、塁に出た時点で即代走が送られるという特別な措置が取られました。当時のパシフィック・リーグにはまだ指名打者制がなかったため、先発出場をする際は守備範囲の狭い一塁手に限定されました。

5月18日の対阪急ブレーブス戦（阪急西宮球場）で、復帰後初スタメンとなったジムタイルは、2回表に阪急先発の足立光宏から先制のソロホームランを打ちました。しかし、一塁に向かう途中で左足に肉離れを起こし倒れてしまったのです。本塁まで走ることが不可能と判断した審判団は、代走の起用を認めました。これは、本塁打を打った打者に代走が送られるというプロ野球史上初の珍事でした。

この時代走を送られた伊勢孝夫は、本塁を踏む際、阪急の捕手・岡村浩二から「ホームランを打った気分はどうだい?」と冷やかされ、恥ずかしかったと述懐しています。しかし、試合はそのまま一塁に入った伊勢が、同点の8回表に米田哲也から決勝本塁打を打ち、今度は正真正銘自分の本塁打で本塁を踏んでいます。

その後、ジムタイルは6月に復帰しましたが、一塁手としての先発出場は伊勢と小川亨のいずれかが大半を占めました。結果として、シーズンを通して自分の本塁打以外での得点は一度もなく、日本での通算記録は「本塁打8・得点7」と、本塁打よりも得点の方が少なくなってしまいました。これは、本塁打を打った際に代走が送られるという非常に稀なケースがない限り起こりえない記録であり、ジムタイルの例が日本プロ野球で唯一の記録となっています（2021年シーズン終了時点）。

ジムタイルの日本での野球人生は決して成功とは言えませんでしたが、その記録と記憶は、今もなおファンの間で語り継がれています。

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