ジム・バーネット

ジム・バーネット：アメリカン・プロレスの巨匠とその波乱万丈な生涯

ジム・バーネット（1924年-2004年）は、アメリカ合衆国を代表するプロレスプロモーターとして知られています。オクラホマ州出身の彼は、若き日にフレッド・コーラーの下でプロレス界の基礎を学び、脚本家としても活躍しました。その後、独立を果たし中西部でプロモーターとしてのキャリアをスタートさせます。

バーネットの才能が開花したのは、オーストラリアでの活動でした。1964年、経営難に陥った中西部地区を離れ、オーストラリアで新団体「ワールド・チャンピオンシップ・レスリング」を設立。IWA世界ヘビー級王座を創設するなど、独自の地位を築き上げました。しかし、その後アメリカに戻り、NWAジョージア地区での事業買収に成功します。

1970年代、バーネットはジョージア・チャンピオンシップ・レスリング（GCW）のオーナーとして、その名を全国に轟かせました。GCWの興行はテッド・ターナーのWTCG（後のWTBS）で全国放送され、高い視聴率を記録。NWA内での影響力も飛躍的に向上し、NWA世界ヘビー級王者のスケジュール決定権を握るまでになりました。この頃、彼はフロリダのエディ・グラハムと並んで、ディープサウスを代表するプロモーターとして君臨します。また、NWAの「主流派」として全日本プロレスとも協力関係を築き、巨匠・ジャイアント馬場との交流もありました。

バーネットの成功は、番組名にも表れています。1982年、彼はWTBSの番組名をオーストラリア時代の団体名と同じ「ワールド・チャンピオンシップ・レスリング」と改名しました。この名称は後にWCW（World Championship Wrestling）に引き継がれ、プロレスの歴史に刻まれることとなります。しかし、この成功は長くは続きませんでした。

1982年末、バーネットは来日中、ヘッドブッカーだったオレイ・アンダーソンによるクーデターに遭い、GCWのオーナーの座を追われます。その後、バーネットはGCWの株式をWWF（World Wrestling Federation）のビンス・マクマホンに売却しました。この売却は、「ブラック・サタデー」と呼ばれるプロレス界の歴史に残る大事件に発展します。

WWFでの地位も長くは続きませんでした。WWF在籍中に、NWAミッドアトランティック地区（JCP）のジム・クロケット・ジュニアと接触していたことが発覚し、解雇されてしまいます。その後、アトランタに戻りJCPに所属。経営難に陥ったJCPでは、テッド・ターナーへの事業売却をクロケットに助言するなど、その手腕は衰えを見せませんでした。

1990年代にはWCWの相談役を務めた後、バーネットは2004年に癌のため80歳で生涯を閉じました。彼は生前、同性愛者であることを公言しており、1950年代には俳優のロック・ハドソンとの関係も噂されていました。没後、NWA殿堂入り、そして2019年にはWWE殿堂のレガシー部門に選出されるなど、その功績は現在も高く評価されています。バーネットの生涯は、アメリカン・プロレス界に大きな足跡を残した、波瀾万丈でドラマチックな物語と言えるでしょう。彼の功績は、プロレスの歴史に永遠に刻まれています。

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