ジム・ワトキンス

ジム・ワトキンス：匿名掲示板と陰謀論の影

ジム・ワトキンスは、1963年生まれの実業家で、元アメリカ陸軍兵士という経歴を持つ人物です。彼は、日本最大級の匿名掲示板として知られる2ちゃんねる（現・5ちゃんねる）と、英語圏の画像掲示板8chan（現・8kun）の運営に深く関わったことで有名です。その活動は、インターネット文化に大きな影響を与えた一方、数々の論争や批判も巻き起こしてきました。彼の息子であるロン・ワトキンスもまた、8chanの元管理人で、陰謀論者として知られています。

2ちゃんねるとの関わり

ワトキンスは2000年頃より、西村博之氏らと協力して2ちゃんねるの運営に関与しました。彼の主な役割は、膨大なトラフィックを支えるサーバー群の管理でした。2ちゃんねるでは「Jim」というニックネームで知られており、PINKちゃんねるの管理人としても活動していました。しかし、2014年には西村氏から管理権限を剥奪する形で、2ちゃんねるの運営権を巡る紛争に発展しました。この紛争は、2023年1月に知的財産高等裁判所で、ワトキンス側の違法な乗っ取りが認定される形で終結しました。

8chanとQアノン

2ちゃんねるから離れた後、ワトキンスはフレドリック・ブレンナン氏と協力して画像掲示板8chanの所有者兼運営者となりました。8chanは、過激なコンテンツやヘイトスピーチが横行する場として知られ、複数の銃乱射事件との関連性が指摘されるなど、大きな批判を浴びました。ワトキンスは、8chanを言論の自由の「最後の砦」と主張する一方、2019年には米国下院司法委員会に召喚され、サイトの運営方針について釈明を求められました。8chanはその後閉鎖されましたが、すぐに後継サイト8kunを立ち上げ、同様の批判を受け続けています。

ワトキンスとQアノン

ワトキンスは、極右陰謀論であるQアノンとの関連性も疑われています。Qアノンは、匿名の投稿者「Q」によって発信された陰謀論であり、その主張は、世界的な児童性的人身売買組織の存在や、ドナルド・トランプ元大統領への陰謀など、極めて過激な内容を含んでいます。「Q」は当初4chanで活動していましたが、後に8chanに移行しました。多くのジャーナリストや陰謀論研究者は、ワトキンス親子が「Q」の素性を知っている、あるいはワトキンス自身が「Q」ではないかと推測しています。

Qアノンの活動と8chanの閉鎖・再開時期が一致する点、フレドリック・ブレンナン氏によるワトキンス親子とQの関与を示唆する発言など、複数の根拠が挙げられています。ワトキンス自身は、2022年には毎日新聞の取材に対し、Qアノンを日本発祥の匿名掲示板文化から生まれたものと主張しています。さらに、彼は「ディープステートの武装解除」という政治行動委員会を設立し、Qアノンを支持する政治家候補者を支援するなど、政治活動にも関わっています。

経歴と人物像

ワトキンスは、N.T.Technology Inc.の会長を務めるなど、ホスティングサーバー事業を展開しています。以前はPacific Internet ExchangeのCOOも務めていました。AERAなどの報道によると、元アメリカ陸軍のヘリコプター整備士であり、コンピューター関連の仕事も並行して行っていたようです。1998年には日本向けのアダルトサイト「アジアンビキニバー」を運営するなど、インターネットビジネスの先駆者としての側面も見られます。彼は万年筆収集家としても知られています。

数々の災難

ワトキンスは、私生活においても数々の災難に見舞われています。1994年のノースリッジ地震、1996年の北米ブリザード、2009年の台風など、自然災害による被害を経験しています。こうした経験も、彼の人生に影響を与えていると考えられます。

メディアへの露出

ワトキンスは、HBOのドキュメンタリー番組『Q: Into the Storm』にも出演しています。この番組では、2018年のQムーブメント初期から2021年1月6日の米議会議事堂襲撃事件までの彼の動向が詳しく紹介されています。

結論

ジム・ワトキンスは、インターネット文化に大きな影響を与えた人物である一方、Qアノン陰謀論や銃乱射事件との関連性など、数々の問題を抱えています。彼の行動は、匿名掲示板というメディアの持つ可能性と危険性を同時に示しており、社会全体でその影響を深く考える必要があるでしょう。彼の生涯は、インターネット社会の光と影を凝縮したような、複雑で興味深い物語と言えるでしょう。

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