ジャガー・XJR-15

ジャガーXJR-15：究極のレーシングスピリットを纏ったロードゴーイングマシン

ジャガーXJR-15は、1990年代初頭にジャガーとトム・ウォーキンショー・レーシング（TWR）が共同で開発した、希少なスーパーカーです。その生産台数はわずか53台。レーシングカーを彷彿とさせる圧倒的なパフォーマンスと、公道走行の両立という、相反する要素を融合させた、異色の存在感を放っています。

誕生の背景：レースから生まれたスーパーカー

TWRは、ジャガー車によるワンメイクレースを企画。そのためのレース専用車両として、XJR-15の開発が始まりました。当初は50台限定の予定でしたが、その卓越した性能と魅力的なデザインから、予想を上回る注目を集め、最終的に53台が製造されました。

ベース車両には、世界スポーツプロトタイプカー選手権（WSPC）やル・マン24時間レースで活躍したXJR-9のフレームやサスペンションが流用され、デザイナーもXJR-9と同じトニー・サウスゲートが担当。レーシングカー譲りの血統を受け継いでいる点が、XJR-15の最大の特徴と言えるでしょう。

圧倒的なパワー：V型12気筒エンジンの咆哮

ミッドシップに搭載されたのは、6リットルV型12気筒SOHCエンジン。最高出力450馬力を発揮するこのエンジンは、IMSAシリーズ参戦車のXJR-9用エンジンのデチューン版です。しかし、そのポテンシャルは計り知れず、チューニングによっては700馬力まで到達可能だったと言われています。

この圧倒的なパワーユニットは、ほぼ同時期に発売されたジャガーXJ220（V型6気筒ツインターボ）と比較されることが多く、自然吸気V型12気筒エンジンを搭載したXJR-15は、マニアから高い評価を受けました。

フラッグシップの座を巡る争い：XJ220との関係

XJR-15は、当初市販車として開発されたXJ220とは異なる成り立ちを持っています。XJ220を凌駕する高い性能と公道走行の両立により、ジャガーのフラッグシップスポーツカーとしての地位を、皮肉にもXJR-15が占めることになりました。販売面ではXJ220の売上に影響を与えたとも言われ、ジャガーとTWRの関係解消にも繋がったとされています。自動車評論家の徳大寺有恒氏も、この点を指摘しています。

レーシングカー並みの性能：居住性の低さとのトレードオフ

レーシングカー譲りの高い性能は、裏を返せば居住性の低さという犠牲を伴っていました。走行中は熱風がドライバーの顔面に襲い掛かり、低速走行時にはラジエーターの水温がすぐに上昇するなど、快適性とは程遠いものでした。車内騒音も大きく、ヘッドホンタイプのレシーバーが標準装備されていたのは、会話すらままならないためだったと言われています。

更なる進化：XJR-15 LM

その後、XJR-15 LMと呼ばれる改良型も登場しました。エンジンはXJR-12に搭載されていたエンジンの発展型である7.4リットルV型12気筒に変更され、最高出力は760馬力に向上。更なる高性能化を果たしたモデルです。

日本での存在：稀少なスーパーカー

日本には少なくとも1台が並行輸入され、カーグラフィック誌にも試乗記が掲載されています。また、LMバージョンは、2017年時点で5台が国内に存在するという情報もあります。

XJR-15の遺産：その後

XJR-15は、1991年にはワンメイクレースも開催されました。また、日産自動車とTWRが共同開発したR390や、林義正氏が制作した「Study Car」のベース車両として、その高いポテンシャルが活かされています。

XJR-15は、その希少性、圧倒的なパフォーマンス、そしてレーシングカーの魂を受け継いだ独特の存在感により、今も多くの自動車ファンを魅了し続けています。まさに、究極のレーシングスピリットを纏ったロードゴーイングマシンと言えるでしょう。

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