ジャガー・XJR-8

ジャガーXJR-8：1987年世界スポーツプロトタイプカー選手権の覇者

1987年、世界スポーツプロトタイプカー選手権(WSPC)の舞台を沸かせた名車、ジャガーXJR-8。トム・ウォーキンショー・レーシング（TWR）が1000kmレースとル・マン24時間レース向けに開発したグループCカーです。通常のXJR-8と、ル・マン24時間レース用に空力性能を最適化した低ドラッグスペシャルのXJR-8LMの2タイプが存在しました。

XJR-8：革新と進化の結晶

XJR-8のデザインは、前モデルであるXJR-6を手がけたトニー・サウスゲートによって担当されました。XJR-6をベースに、整備性の向上を追求。心臓部であるエンジンは、XJR-6と同じV型12気筒ですが、排気量は6,995ccへと拡大され、パワーアップが図られました。

シャシーは軽量かつ高剛性のカーボンモノコックを採用。サスペンションはXJR-6の流れを汲みつつ、改良が加えられています。特筆すべきはタイヤ径で、フロント17インチ、リア19インチという大径タイヤが採用されたため、ドライブシャフトには角度が付けられました。さらに、ダンロップとの共同開発によるタイヤセンサーを搭載し、コックピットからタイヤの状態をモニターできるシステムが導入されるなど、先進的な技術が惜しみなく投入されました。

伝説のデビューとWSPC制覇

XJR-8のデビュー戦は、WSPC開幕戦であるハラマ（スペイン）でした。このレースでいきなり優勝を飾ると、その後もポルシェ962Cを相手に開幕4連勝を達成。圧倒的な速さでル・マン24時間レースへと臨みました。

ル・マンでは、ライバルチームのポルシェが燃料のオクタン価に苦戦する中、序盤からリードを奪う活躍を見せました。しかし、レースは長く、幾度ものアクシデントに見舞われ、最終的に5位で完走という結果に終わりました。

それでも、その年のWSPCでは全10戦中8勝を挙げ、シリーズチャンピオンを獲得。ポルシェを圧倒し、チームとドライバー（ラウル・ボーセル）の二冠を達成するという偉業を成し遂げました。

XJR-8LM：ル・マン攻略のための進化

ル・マン24時間レースの過酷な条件をクリアするために、XJR-8LMが開発されました。耐久性を高めるため、エンジンは前傾して搭載され、ドライブシャフトは水平に取り付けられました。カウルの肉厚化、リアタイヤスパッツの撤去、空力性能の向上を目指したリヤウイングとディフューザーの小型化といった改良が施され、最高速度370km/hを目指した設計となっています。また、素早いピット作業を可能にするため、パーツ交換の容易さも考慮されました。その結果、XJR-8の850kgから880kgへと車重が増加しました。

過酷なテストとル・マン挑戦

ポール・リカールやイギリス国内のサーキットでテストを重ねた後、XJR-8はWSPC第4戦シルバーストン1000kmに参戦。予選10位から一時3位まで順位を上げるも、リタイアという結果に終わりました。

ル・マン24時間レースに向けては、3台のXJR-8LMがテストデイに参加。チームはドライバーに一定のペースでの走行を指示し、チーム内での競争を禁止するなど、万全の体制でレースに臨みました。

ル・マン本番では、TWRジャガーの3台のXJR-8LMが参戦。チームはドライバーに一定ペースでの走行を指示し、チーム内競争を禁止することで、戦略的なレース運びを行いました。

XJR-8、そしてその後の系譜

XJR-8とその進化型であるXJR-8LMは、ジャガーのレーシングの歴史に燦然と輝く1ページを刻みました。その技術と経験は、後のXJR-9へと受け継がれ、ジャガーのモータースポーツにおけるさらなる成功へと繋がることとなります。 XJR-8の活躍は、技術革新とチームワークの勝利の物語として、今も語り継がれています。そして、その伝説は、モータースポーツの歴史に永遠に刻まれることでしょう。

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