ジャガー・XKエンジン

ジャガーXKエンジン：英国車黄金時代を支えた名機

ジャガーXKエンジンは、ジャガー車が誇る伝説的な直列6気筒ガソリンエンジンのシリーズです。1940年代後半から1980年代まで長期にわたり生産され、同社の様々な車種に搭載されたことで知られています。

その歴史は第二次世界大戦前にまで遡ります。レース参戦を目指した開発は、終戦後も継続され、当初は「X」というコードネームで呼ばれていました。サルーン車への搭載を本格的に検討する段階で「XK」と改名され、現在まで続く名称となりました。

XKエンジンの最大の特徴は、当時としては画期的だったチェーンドライブ式DOHC（ダブル・オーバーヘッド・カムシャフト）機構です。第二次世界大戦直後のイギリスでは、サイドバルブ式エンジンが主流だったため、XKエンジンの高性能ぶりは際立っていました。ロングストロークタイプの設計は、イギリス中級・高級車エンジンに共通する特徴であり、力強いトルクを発生させました。

排気量は、約3,400ccの6気筒と約2,000ccの4気筒の2種類が用意されました。当初は、発売予定だった1948年モデルのボディが間に合わず、急遽、戦前型のボディに既存のエンジンを搭載したジャガー・マークVをロンドンショーに出展する予定でした。しかし、それだけでは注目を集められないと判断したウィリアム・ライオンズは、XKエンジンを搭載したスポーツカーを急遽製作。これが、6気筒エンジンのジャガーXK120と、4気筒エンジンのジャガーXK100として発表され、大成功を収めました。

XKエンジンの汎用性の高さは驚くべきものでした。ジャガーの一般量産車はもちろん、レーシングカーにも搭載され数々の勝利に貢献。さらに、1960年代にジャガー傘下となったデイムラーブランドの高級リムジンにも採用されるなど、幅広い車種に搭載されました。

その高い信頼性と性能から、XKエンジンは長きにわたる生産期間を誇ります。1980年代のジャガーXJモデルにまで搭載されるなど、ジャガー車の発展に大きく貢献しました。XKエンジンは、単なる自動車部品ではなく、ジャガーの歴史そのものを象徴する存在と言えるでしょう。

開発は、ウォルター・ハッサンが1938年にSSカーズ（後のジャガー）に招聘され、ウィリアム・ヘインズの下で開始されました。戦時下においても開発は続けられ、終戦後の本格的な設計を経て、XKエンジンは完成へと至りました。このエンジンの開発には、多くの技術者達の努力と情熱が注がれ、後のジャガーの成功に繋がる重要な役割を果たしたことは間違いありません。

XKエンジンは、単なるエンジンを超えた存在感を持ちます。それは、ジャガーの歴史、技術革新、そして英国自動車産業の黄金時代を象徴する名機として、これからも語り継がれることでしょう。

もう一度検索