ジャコモ・カリッシミ
ジャーコモ・カリッシミ（Giacomo Carissimi）は、17世紀イタリア、盛期バロック時代に活躍した作曲家です。ローマ楽派に属し、特に教会音楽においてその名を馳せました。
カリッシミの幼少期や正確な生年月日は判明していませんが、ローマ近郊の町マリーノで1604年または1605年頃に生まれたと推測されています。父親は酒樽を作る職人でした。音楽の道に進んだ彼は、およそ20歳になった頃、アッシジの聖堂で音楽指揮者として活動を始めました。1628年には、ローマのドイツ人神学校（コレギウム・ゲルマニクム）に附属する聖アポリナリス教会の楽長に就任し、その地位を亡くなるまで務めました。この間、名門であるヴェネツィアのサン・マルコ大聖堂から楽長職の後任候補として招聘されるなど、高い評価を受けていましたが、故郷ローマを離れることはありませんでした。1637年には司祭に叙任されています。
カリッシミの音楽的な功績として、主に三つの点が挙げられます。一つ目は、クラウディオ・モンテヴェルディによって開拓されたレチタティーヴォをさらに発展させたことです。これはオペラや劇音楽の歴史において非常に重要な意味を持ちます。二つ目は、室内カンタータの形式を発展させたことです。これにより、彼は当時のコンチェルタート様式のマドリガーレに代わる、新しい声楽ジャンルを確立しました。そして三つ目は、オラトリオというジャンルの発展に貢献したことです。彼はオラトリオという形式の初期において、極めて重要な作曲家でした。
教会音楽や室内カンタータの歴史における彼の位置づけは、オペラ史におけるフランチェスコ・カヴァッリのそれにいくぶん似ています。室内カンタータの先駆者としてはルイージ・デ・ロッシがいますが、カリッシミはこの楽種を、室内楽の最も知的な表現手段として確立した最初の作曲家であり、このカンタータの役割は、アレッサンドロ・スカルラッティやベネデット・マルチェッロらが活躍した時代まで継続しました。
カリッシミは、おそらく最も有名なオラトリオ《イェフタ（Jephte）》を含む多くの作品を通じて、初期のオラトリオ作曲家として名声を確立しました。彼のオラトリオは、劇的な演技を伴わないこの形式を定着させたという点で重要であり、その影響力はその後200年にわたって及ぶことになります。彼はまた、声楽曲における器楽伴奏に多様性をもたらし、大きな関心を示したことでも評価されています。
カリッシミが活動した時代は、イタリアにおいて世俗音楽が宗教音楽の優位性を脅かし始めていた転換期でした。彼の創作活動が始まった頃には、パレストリーナなどのローマ楽派の古い様式の影響がまだ残っていましたが、彼が亡くなる頃には、オペラや世俗的な器楽曲が支配的な地位を占めるようになっていました。
カリッシミは優れた教師としても知られ、その音楽様式はイタリア国外、特にドイツやフランスにも大きな影響を与えました。例えば、フランスの作曲家マルカントワーヌ・シャルパンティエの音楽様式は、カリッシミから多くを学んだと言われています。また、ドイツのベネディクト・アントン・アウフシュナイターは、理想とする音楽家の一人としてカリッシミを挙げています。
彼の作品は後世に伝えられ、音楽史家であるバーニー博士やジョン・ホーキンス卿は、それぞれの音楽史に関する著書の中で彼の譜例を紹介しています。ヘンリー・オルドリッチ博士は、現在オックスフォード大学クライスト・チャーチ校附属図書館に収蔵されている彼の作品のほぼ全容を収集しました。大英図書館にも多くのカリッシミ作品が収められています。彼のオラトリオの自筆譜の多くは、現在パリ国立図書館に所蔵されています。
オラトリオ
イェフタ（Jephte, 6声と通奏低音、1648年）
ヨナ（Jonas, 独唱者、二重混声合唱、ヴァイオリン2、通奏低音）
最後の審判（Judicium Extremum, 独唱者、合唱、通奏低音）
ヴァニタス・ヴァニタートゥム（Vanitas Vanitatum, 5声、ヴァイオリン2、通奏低音）
カンタータ
泣け、そよ風よ、泣け（Piangete, aure, piangete, ソプラノと通奏低音）
勝利だ、私の心よ（Vittoria, mio core, ソプラノと通奏低音、1646年）
待って、私に話させてください（Ferma, Lascia Ch'Io Parli, ソプラノと通奏低音、1650年）
モテット
預言者エレミヤの哀歌（Lamentationes Jeremiae Prophetae, メゾソプラノ、ソプラノ、通奏低音）
奮い立て、わが心よ（Exurge, cor meum, ソプラノ、ヴァイオリン2、ヴィオラ、通奏低音、1670年）
ミサ曲
高き舟端より舟綱を解き（Sciolto havean dall'alte sponde, 5声と通奏低音）
これらの作品は、カリッシミがバロック期における声楽表現の発展に果たした重要な役割を示しています。
生涯
カリッシミの幼少期や正確な生年月日は判明していませんが、ローマ近郊の町マリーノで1604年または1605年頃に生まれたと推測されています。父親は酒樽を作る職人でした。音楽の道に進んだ彼は、およそ20歳になった頃、アッシジの聖堂で音楽指揮者として活動を始めました。1628年には、ローマのドイツ人神学校（コレギウム・ゲルマニクム）に附属する聖アポリナリス教会の楽長に就任し、その地位を亡くなるまで務めました。この間、名門であるヴェネツィアのサン・マルコ大聖堂から楽長職の後任候補として招聘されるなど、高い評価を受けていましたが、故郷ローマを離れることはありませんでした。1637年には司祭に叙任されています。
音楽的業績と作風
カリッシミの音楽的な功績として、主に三つの点が挙げられます。一つ目は、クラウディオ・モンテヴェルディによって開拓されたレチタティーヴォをさらに発展させたことです。これはオペラや劇音楽の歴史において非常に重要な意味を持ちます。二つ目は、室内カンタータの形式を発展させたことです。これにより、彼は当時のコンチェルタート様式のマドリガーレに代わる、新しい声楽ジャンルを確立しました。そして三つ目は、オラトリオというジャンルの発展に貢献したことです。彼はオラトリオという形式の初期において、極めて重要な作曲家でした。
教会音楽や室内カンタータの歴史における彼の位置づけは、オペラ史におけるフランチェスコ・カヴァッリのそれにいくぶん似ています。室内カンタータの先駆者としてはルイージ・デ・ロッシがいますが、カリッシミはこの楽種を、室内楽の最も知的な表現手段として確立した最初の作曲家であり、このカンタータの役割は、アレッサンドロ・スカルラッティやベネデット・マルチェッロらが活躍した時代まで継続しました。
カリッシミは、おそらく最も有名なオラトリオ《イェフタ（Jephte）》を含む多くの作品を通じて、初期のオラトリオ作曲家として名声を確立しました。彼のオラトリオは、劇的な演技を伴わないこの形式を定着させたという点で重要であり、その影響力はその後200年にわたって及ぶことになります。彼はまた、声楽曲における器楽伴奏に多様性をもたらし、大きな関心を示したことでも評価されています。
カリッシミが活動した時代は、イタリアにおいて世俗音楽が宗教音楽の優位性を脅かし始めていた転換期でした。彼の創作活動が始まった頃には、パレストリーナなどのローマ楽派の古い様式の影響がまだ残っていましたが、彼が亡くなる頃には、オペラや世俗的な器楽曲が支配的な地位を占めるようになっていました。
影響と作品の伝承
カリッシミは優れた教師としても知られ、その音楽様式はイタリア国外、特にドイツやフランスにも大きな影響を与えました。例えば、フランスの作曲家マルカントワーヌ・シャルパンティエの音楽様式は、カリッシミから多くを学んだと言われています。また、ドイツのベネディクト・アントン・アウフシュナイターは、理想とする音楽家の一人としてカリッシミを挙げています。
彼の作品は後世に伝えられ、音楽史家であるバーニー博士やジョン・ホーキンス卿は、それぞれの音楽史に関する著書の中で彼の譜例を紹介しています。ヘンリー・オルドリッチ博士は、現在オックスフォード大学クライスト・チャーチ校附属図書館に収蔵されている彼の作品のほぼ全容を収集しました。大英図書館にも多くのカリッシミ作品が収められています。彼のオラトリオの自筆譜の多くは、現在パリ国立図書館に所蔵されています。
主要作品
オラトリオ
イェフタ（Jephte, 6声と通奏低音、1648年）
ヨナ（Jonas, 独唱者、二重混声合唱、ヴァイオリン2、通奏低音）
最後の審判（Judicium Extremum, 独唱者、合唱、通奏低音）
ヴァニタス・ヴァニタートゥム（Vanitas Vanitatum, 5声、ヴァイオリン2、通奏低音）
カンタータ
泣け、そよ風よ、泣け（Piangete, aure, piangete, ソプラノと通奏低音）
勝利だ、私の心よ（Vittoria, mio core, ソプラノと通奏低音、1646年）
待って、私に話させてください（Ferma, Lascia Ch'Io Parli, ソプラノと通奏低音、1650年）
モテット
預言者エレミヤの哀歌（Lamentationes Jeremiae Prophetae, メゾソプラノ、ソプラノ、通奏低音）
奮い立て、わが心よ（Exurge, cor meum, ソプラノ、ヴァイオリン2、ヴィオラ、通奏低音、1670年）
ミサ曲
高き舟端より舟綱を解き（Sciolto havean dall'alte sponde, 5声と通奏低音）
これらの作品は、カリッシミがバロック期における声楽表現の発展に果たした重要な役割を示しています。
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