ジャズパー賞

ジャズパー賞（Jazzpar Prize）

ジャズパー賞は、デンマークで1990年に創設され、毎年開催された権威ある国際的なジャズ賞です。トランペット奏者であるアーンヴィッド・メイヤー氏によって設立され、ジャズ界に貢献した優れた演奏家を表彰することを目的としていました。

この賞は、単なる表彰にとどまらず、受賞者には多大な栄誉が与えられました。具体的には、200,000デンマーク・クローネという高額な賞金に加え、著名な芸術家であるヨーアン・ハウゲン・セーレンセン氏が特別にデザインした印象的な銅像がトロフィーとして授与されました。これらの内容は、受賞者が国際的に高く評価されていることの証であり、その功績を称えるにふさわしいものでした。

受賞者の選考プロセスは非常に厳格かつ国際的でした。まず、世界各地で認められているジャズミュージシャンの中から、わずか5名の候補者が慎重に絞り込まれました。この候補者リストは、世界各国の著名なジャズ批評家やジャーナリストからなる国際的なパネリストによって決定されました。選考委員会のメンバーには、イタリアの音楽雑誌『Musica Jazz』編集者で「Europe Jazz Network」創設者であるフィリッポ・ビアンキ氏、フランスの雑誌『Jazzman』編集者アレックス・デュティル氏、デンマークのジャーナリスト兼ラジオプロデューサーのピーター・H・ラーセン氏、アメリカのジャズ史家ダン・モーゲンシュテルン氏、イギリスの編集者ブライアン・プリーストリー氏、そしてデンマークのジャズ批評家ボリス・ラビノヴィッチ氏などが名を連ねていました。こうした国際色豊かな選考委員の存在が、賞の信頼性と公正性を高めていました。

授賞式典は例年、晩春の美しい季節にデンマークの首都コペンハーゲンで開催されました。この式典は、単なる授賞式に留まらず、コペンハーゲンにおけるジャズの活性化週間をスタートさせる重要なイベントとしての役割も担っていました。式典には多くのジャズ関係者やファンが集い、街全体がジャズの活気で満たされる特別な期間となっていました。

長年にわたり、ジャズパー賞の活動を支えてきた主要なスポンサーは、スカンジナビアン・タバコ・カンパニーでした。しかし、残念ながらこの主要スポンサーからの支援が得られなくなったことが、賞の継続を困難にしました。その結果、ジャズパー賞は2005年をもってその歴史に幕を閉じることとなりました。賞の創設者であるアーンヴィッド・メイヤー氏は、賞が終了した後の2007年に惜しまれつつ亡くなっています。

ジャズパー賞は比較的短命ではありましたが、その存在期間中に数々の偉大なジャズアーティストを表彰し、デンマーク、特にコペンハーゲンのジャズシーンの発展に大きく貢献しました。以下に、1990年から2004年までの歴代受賞者を示します。

歴代受賞者リスト

1990年 : ムハル・リチャード・エイブラムス (Muhal Richard Abrams)
1991年 : デヴィッド・マレイ (David Murray) - アルバム『The Jazzpar Prize』
1992年 : リー・コニッツ (Lee Konitz)
1993年 : トミー・フラナガン (Tommy Flanagan) - アルバム『Flanagan's Shenanigans』
1994年 : ロイ・ヘインズ (Roy Haynes)
1995年 : トニー・コー (Tony Coe)
1996年 : ジェリ・アレン (Geri Allen) - アルバム『Some Aspects of Water』
1997年 : ジャンゴ・ベイツ (Django Bates)
1998年 : ジム・ホール (Jim Hall)
1999年 : マーシャル・ソラール (Martial Solal)
2000年 : クリス・ポッター (Chris Potter) - アルバum『This Will Be』
2001年 : マリリン・マズール (Marilyn Mazur)
2002年 : エンリコ・ラヴァ (Enrico Rava)
2003年 : アンドリュー・ヒル (Andrew Hill) - アルバム『The Day the World Stood Still』
* 2004年 : アルド・ロマーノ (Aldo Romano)

ジャズパー賞は、国際的なジャズシーンにおけるデンマークの存在感を示すとともに、多くの優れたミュージシャンにスポットライトを当てる貴重な機会を提供しました。その遺産は、今も多くのジャズファンや関係者の記憶に残っています。

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