ジャック・ドリル

ジャック・ドリルについて

ジャック・ドリル（Jacques Delille、1738年6月22日 - 1813年5月1日）は、フランスの著名な詩人であり、また翻訳家としても高く評価されています。彼はオーヴェルニュのエグペルスに生まれ、最終的にはパリでこの世を去りました。彼は庶子として誕生しましたが、母方の家系は宰相ミシェル・ド・ロピタルに繋がるため、優れた血筋を有していました。

彼の人生は文学との深い関わりに満ちており、幼少期の10歳でパリに移住し、名門寄宿学校であるコレージュ・ド・リジューに通うことになります。小学校の教師としての経歴を経て、徐々に詩人としての名声を得るようになりました。ドリルの作品はしばしば独特な言い回しを用いており、平凡な事象を凝った表現で描くことが特徴でした。たとえば、「砂糖」を「アメリカの蜜」という形で表現するなど、その文学的スタイルは非常に個性的でした。

彼は1769年にウェルギリウスの『農耕詩』の翻訳を発表し、一躍有名になります。この翻訳は彼が19歳の頃から取り組み始めたもので、「自由な翻訳」と称される作品でした。この成功により、著名な作家ヴォルテールからアカデミー・フランセーズの一員に推薦されることとなりますが、当時の国王ルイ15世の反対により、実際に会員となるのは1774年まで待たなければなりませんでした。

1782年に発表した『庭、あるいは風景をかざる術』は、彼の詩人としての才能をさらに引き立てる作品となりました。また、1786年には駐トルコ・フランス大使に同行してコンスタンティノープル（現イスタンブール）を訪れるなど、人生の中で多くの経験を重ねました。

しかし、フランス革命によって彼の生活は一変します。革命の大義を支持することで生き延びようとしましたが、結局はパリを離れてサン＝ディエ＝デ＝ヴォージュに隠れ、ウェルギリウスの『アエネーイス』の翻訳に専念しました。その後、革命の影響から逃れるためにスイスに移住し、さらにドイツやロンドンに滞在しながら創作活動を続けます。

1802年にようやくパリに戻ることができましたが、視力を徐々に失いつつあり、再び教授職に復帰しながらも、彼の生活は引退状態となります。しかし、描写的な詩のスタイルは彼の得意分野であり、その人気が衰える前に生涯を閉じました。

主な作品

ドリルの作風は主に詩に集中しており、散文作品はほとんど残っていません。特に、『農耕詩』の翻訳に関する序文は高く評価されており、翻訳技術やその困難さに関する貴重な洞察を提供しています。彼が執筆した作品の中には、以下のような詩集が含まれています。

• - Les Géorgiques de Virgile (1769)
• - Les Jardins (1780)
• - L'Homme des champs (1802)
• - La Pitié (1802)
• - L'Énéide de Virgile (1804)
• - Le Paradis perdu (1804)

また、彼の作品集は1824年に全16巻として刊行され、多くの文学愛好者に読まれています。

後世の評価

ドリルは、啓蒙思想の時代に活躍した詩人として、当時の文学にはあまり注目が集まらなかったものの、1974年にエドゥアール・ギトンが彼に関する研究を発表し、初期ロマン主義との繋がりが浮き彫りになったことから、再評価の兆しが見えてきました。彼の作品は今や、啓蒙期の感受性からロマン主義の叙情詩へと繋がる重要な軸として認識されています。

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