ジャネット・リン

ジャネット・リン（Janet Lynn Nowicki、1953年4月6日 - ）は、アメリカ合衆国イリノイ州シカゴ出身のフィギュアスケート選手です。1972年の札幌オリンピック女子シングルで銅メダルを獲得し、その愛くるしい笑顔と優雅な演技で世界中の人々を魅了しました。競技者としては、ファミリーネームの「ノーウィッキ」を落とした「ジャネット・リン」の名で知られています。

幼少期からオリンピックへ

シカゴ郊外で生まれ育ったリンは、3歳半でスケートを始め、5歳から本格的なフィギュアスケートの訓練をスタートしました。12歳でジュニアの国内選手権で優勝し、その才能を開花させました。1968年のグルノーブルオリンピックには14歳という若さで出場を果たし、9位入賞という成績を収めました。グルノーブルオリンピックでの出来事として、記者から「アメリカのもので何が一番恋しいか」と問われた際に「ハンバーガー」と答えたところ、マクドナルドがアメリカ選手団にハンバーガー100個を差し入れ、話題となりました。このオリンピックの後、金メダリストであるペギー・フレミングがプロに転向すると、リンはアメリカ女子フィギュア界のエースとして注目を集めるようになりました。1973年まで、全米選手権で5年連続優勝を飾り、USレディース・シニア・ナショナル・チャンピオンの座を維持しました。

札幌オリンピックでの輝き

1972年、18歳で出場した札幌オリンピックでは、フリースケーティング中にシットスピンで転倒するアクシデントに見舞われました。しかし、転倒後も笑顔を絶やさず演技を続けたその姿は、芸術点満点の6.0を記録するなど、高い評価を受けました。当時のルールではコンパルソリーの比重が高かったため、合計点では3位にとどまりましたが、この結果は翌年からのルール変更、ショートプログラム導入のきっかけの一つとなりました。リンの笑顔は世界中で称賛され、彼女の髪型は、当時有名なヘアスタイリストであったヴィダル・サスーンによってカットされたものでした。

日本での人気とプロ転向

その愛くるしい笑顔から、「札幌の恋人」「銀盤の妖精」と呼ばれ、日本中で人気者となりました。カルピスのCMにも出演し、人気を博しました。選手村の自室の壁に「Peace & Love」と書き残して日本を離れましたが、その後の建物改修で落書きは消えてしまいました。しかし翌1973年に再来日した際、サインした「Peace, Love + Life」は現在も保存されています。また、後年、化粧品メーカーであるオリリー化粧品のCMにも出演し、そこでも「Peace & Love」のサインを書いています。歌手の竹内まりやは、ファンの一人であり、留学中、ホームステイ先の紹介でリンの自宅に招待されたというエピソードも残っています。

札幌オリンピックの翌年、1973年にリンはプロに転向し、145万ドルという破格の契約金でアイス・フォーリーズに所属しました。各地で巡業を行う傍ら、全米主要都市の広報活動にも従事しました。しかし、1975年に喘息のため引退を余儀なくされました。その後、結婚し、双子を含む5人の子供を授かりました。食事療法で喘息を克服し、1981年に現役復帰を果たし、1982年と1983年にはプロのスケート選手権で優勝しました。1984年に再び引退し、「スケートよりも家族が大切」と語っています。

引退後の活躍

引退後も日本での人気は衰えず、1983年にはTBSテレビドラマ『胸さわぐ苺たち』に本人役でゲスト出演しました。1994年にはアメリカ・フィギュアスケート界の栄誉殿堂入りを果たしました。1998年の長野オリンピックでは、スポンサーであるマクドナルドの長野オリンピック・スポークスパーソンとして来日し、選手村のマクドナルドオープニングセレモニーで挨拶を行いました。この際、マクドナルドのCMにも出演しています。2001年には世界フィギュアスケート殿堂入りを果たしました。2007年には、キリスト教系の文書伝導キャンペーンに、プロ野球監督のヒルマン氏や歌手の久米小百合氏らと共に出演しました。2022年2月には、札幌市が札幌冬季五輪50周年を記念してリンのメッセージを公開しました。

主な戦績

1972年札幌オリンピック 銅メダル
全米選手権 5年連続優勝
プロスケート選手権 2回優勝

著書

愛と平和を (平野みどり訳、英友社、1975年5月)
ジャネット・リン ママになった妖精（小学館、1984年） ISBN 9784093060073

出演

CM
カルピス
オリリー化粧品 （1982年）
* 日本マクドナルド（1998年）

脚注

外部リンク

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