ジャワ戦争

ジャワ戦争：ディポヌゴロの反乱と植民地支配の転換点

ジャワ戦争（1825-1830年）は、ジャワ島で勃発した大規模な反乱であり、ディポヌゴロ戦争とも呼ばれます。この戦争は、ジャワ人の指導者ディポヌゴロが率いるジャワ勢力と、オランダ領東インドとの間で繰り広げられました。戦争は、スルタン家の王位継承問題を発端としましたが、その背景には、オランダ植民地支配に対するジャワ人の不満が深く根付いていました。この戦いは、ジャワにおける最後の反植民地闘争であり、オランダにとっても最大規模の戦争の一つとなりました。

戦争の背景

ヨーロッパ支配への反感

18世紀末、ジャワを支配していたオランダはフランス革命軍によって征服され、一時的にフランスの支配下に入りました。1808年にフランスから派遣されたダーンデルス総督は、ジャワ宮廷の儀礼を無視し、チークの貿易権を独占するなど、ジャワ貴族の反感を買いました。これにより、1810年にラデン・ランガの乱が勃発し、鎮圧後、ダーンデルスはハメンクブウォノ2世を退位させ、スルタン家の領地の一部を割譲させるなど、ジャワ王室の権威を著しく傷つけました。

1811年、イギリスがジャワを占領し、ラッフルズ副総督はジャワ王家から領土を割譲させ、徴税権を奪い、王家の財政を悪化させました。ナポレオン戦争終結後、ジャワはオランダに返還されましたが、オランダは本国の財政再建のためジャワに重税を課し、王族・貴族の土地を農園として貸し出すなど、ジャワ人の不満を高めていきました。

華僑の台頭

ヨーロッパ人の支配によって財政難に陥ったジャワの王族・貴族は、植民地政庁の庇護下で力を増していた華僑に経済的に依存するようになりました。華僑は、マタラム王国時代からジャワ王家に仕え、オランダ東インド会社の下ではアヘン取引の独占権を与えられるなど、一定の影響力を持っていました。明の崩壊後、ジャワへの移民が増加し、各地に華僑社会が形成されました。彼らは徴税人としてジャワ王家の主要な収入源を担いましたが、その徴税権の拡大が、ジャワ人の反感を買うことにもなりました。

王位継承問題

このような状況下で、スルタン家の王位継承問題が起こりました。ハメンクブウォノ2世の廃位と復位、さらにハメンクブウォノ3世の崩御後、民衆の人気が高いディポヌゴロは、母親の身分が低いことを理由に王位を継げませんでした。その後、ハメンクブウォノ4世が崩御し、幼いメノルがハメンクブウォノ5世として即位しましたが、オランダ人官吏が玉座に座るという行為が、ディポヌゴロの怒りを買いました。また、オランダによる領土貸与禁止令によってディポヌゴロの財政も悪化し、オランダがハメンクブウォノ家の墓を破壊したことが決定的な要因となり、ディポヌゴロは反乱を決意しました。

戦争の推移

1825年、ディポヌゴロは反乱を宣言し、オランダ軍との戦闘を開始しました。ジャワの民衆は、オランダへの不満からディポヌゴロ軍に協力し、王族や貴族も加わりました。ディポヌゴロ軍はジョグジャカルタを奪い、ジャワ中央部を支配下に置きましたが、オランダ軍も近代的な軍隊を動員し、激しい戦闘が繰り広げられました。当初はオランダ軍が優勢でしたが、ディポヌゴロ軍はゲリラ戦術や地形を利用して対抗し、一進一退を繰り返しました。しかし、戦争が長期化するにつれ、ディポヌゴロ軍は徐々に劣勢となり、1830年、ディポヌゴロはオランダ軍に捕縛され、追放されました。

戦後のジャワ

ジャワ戦争後、オランダはスルタン家の領土を大幅に割譲させ、司法権を掌握するなど、スルタン家の影響力を排除しました。また、華僑の土地所有を制限し、その影響力を抑制しました。これにより、ジャワの王族や華僑の勢力は衰退しました。また、強制栽培制度の導入により、オランダは莫大な利益を得て財政を立て直しました。ジャワ戦争とパドリ戦争の終結により、オランダ領東インドでは大規模な反乱は起こらず、1945年のインドネシア独立までオランダの植民地支配が続きました。

ジャワ戦争は、ジャワにおける最後の反植民地闘争であり、オランダの植民地支配の転換点となりました。この戦争は、その後のインドネシアの歴史に大きな影響を与え、民族意識の高まりに繋がる重要な出来事となりました。

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