マタラム王国

マタラム王国（マタラムおうこく、ꦤꦒꦫꦶꦩꦠꦫꦩ꧀）は、16世紀末にジャワ島中部に成立したイスラム王国です。「マタラム」はジョグジャカルタ地方の古名に由来し、ジャワの歴史上、古マタラム王国（ヒンドゥー・マタラム）と区別するために、新マタラム王国（イスラム・マタラム）と呼ばれることもあります。

概要

マタラム王国は、中部ジャワの肥沃な農業地帯を支配し、米の輸出港としてジャワ島北部の港市国家に影響力を持ちました。17世紀にはジャワ島中東部で強大な勢力を誇りましたが、1[[8世紀]]半ばにはオランダ東インド会社の介入により、1755年にジョグジャカルタとスラカルタの2つの王家に分割され、王国としての歴史を終えました。ジャワ西部にも強い影響力を持っていましたが、バタヴィア（現在のジャカルタ）とバンテン王国は支配下にはありませんでした。

歴史

建国期

マタラム王国の起源は、中部ジャワ内陸部に台頭したパジャン王国に遡ります。年代記『ババッド・タナハ・ジャーウィー』によると、パジャン王国とマタラム王国は、マジャパヒト王国の後継者であるとされています。パジャン王ジョコ・ティンキールの命を受けたキヤイ・グデ・パマナハンがマタラムに勢力を拡大し、その子スタウィジャヤ（セノパティ）が1586年にマタラムをパジャンから独立させました。

勢力拡大期

セノパティはパジャンを併合し、1590年代にはドゥマクやジュパラなどのイスラム系港市国家を支配しました。これにより、重要な米の輸出港を確保しました。セノパティの子、パネンバハン・セダ・クラプヤックの時代には、東ジャワのスラバヤへの攻撃が始まり、クラプヤックの後継者スルタン・アグンの時代には、1625年にスラバヤとマドゥラ島を支配下に置きました。

スルタン・アグンは、ジャワ島西部のバンテン王国への進出を試み、1628年から1629年にかけて、オランダが商館を置いていたバタヴィアを2度攻撃しましたが、オランダ勢力の駆逐には失敗しました。しかし、17世紀前半には、バタヴィアとバンテンを除くジャワ全島を支配下に置くことに成功しました。

アグンの後を継いだアマンクラト1世は、オランダとの関係改善を図り、1646年に平和協定を締結しました。これにより、ジャワ島東部北岸の諸港におけるオランダとの交易を独占しました。しかし、国内では強権的な統治を行い、地方支配者やイスラム指導者を次々と暗殺したため、地方貴族層からの反乱を招き、1677年には首都が陥落しました。

衰退期

アマンクラト1世の後を継いだアマンクラト2世は、反乱鎮圧のためにオランダの支援を要請し、その見返りとして、オランダに多くの特権を与えました。これにより、オランダの勢力が拡大し、マタラム王国の交渉力は低下しました。1703年にアマンクラト2世が死去すると、王位継承をめぐる内紛が起こり、オランダ東インド会社が介入する第1次ジャワ継承戦争が勃発。その後も王位継承をめぐる争いが続き、オランダが介入した第2次、第3次ジャワ継承戦争が発生しました。

1755年、オランダ東インド会社は戦費の増大から支援を断念し、マタラム王国はジョグジャカルタとスラカルタの2つの王家に分割されました。さらに1757年にはスラカルタからマンク・ヌゴロ家が、1813年にはジョグジャカルタからパク・アラム家が分立しました。これにより、マタラム王国という国名は消滅しました。これらの王家の領地はオランダの保護領とされましたが、ジャワ文化の中心としての地位は保ち続けました。1825年にはジョグジャカルタのディポヌゴロ王子を中心とした大規模な武装蜂起（ジャワ戦争）が発生しましたが、1830年に鎮圧されました。

インドネシア独立戦争において、ジョグジャカルタのスルタン家のハメンクブウォノ9世は、共和国側を支持し、重要な役割を果たしました。独立後、ハメンクブウォノ9世はジョグジャカルタ特別州知事を務め、一時期は共和国の内相、国防相、副大統領に就任しました。現在の当主ハメンクブウォノ10世も、ジョグジャカルタ特別州知事とスルタンを兼ねています。

歴代スルタン

セノパティ（1587年 - 1601年）
パネンバハン（1601年 - 1613年）
スルタン・アグン（1613年 - 1645年）
アマンクラト1世（1645年 - 1677年）
アマンクラト2世（1677年 - 1703年）
アマンクラト3世（1703年 - 1705年）
パクブウォノ1世（1705年 - 1719年）
アマンクラト4世（1719年 - 1726年）
パクブウォノ2世（1726年 - 1749年）
パクブウォノ3世（1749年 - 1755年）

脚注

参考文献

Steinberg, David J. (1987). In Search of Southeast Asia: A Modern History (revised ed.). Honolulu: University of Hawaii Press. ISBN 0824811100
Ricklefs, M. C. (1993). A History of Modern Indonesia since c.1300 (2nd ed.). Stanford, California: Stanford University Press. ISBN 9780333576908
増田与『インドネシア現代史』中央公論社、1971年。
和田久徳ほか編『東南アジア現代史Ⅰ 総説・インドネシア』山川出版社〈世界現代史〉、1977年。
永積昭『インドネシア民族意識の形成』東京大学出版会、1980年。ISBN 4130250027。
石井[[米雄]]・桜井由躬雄『東南アジア世界の形成』講談社〈ビジュアル版世界の歴史〉、1985年。ISBN 406188512X。
池端雪浦編『東南アジア史Ⅱ 島嶼部』山川出版社〈新版世界各国史〉、1999年。ISBN 4634413604。
永積昭『オランダ東インド会社』講談社〈講談社学術文庫〉、2000年。ISBN 4061594540。
石井[[米雄]] 編『東南アジア近世の成立』岩波書店〈岩波講座東南アジア史〉、2001年。ISBN 4000110632。

関連項目

王国'>古マタラム王国
ジョグジャカルタ - スルタン家とパク・アラム家
スラカルタ'>スラカルタ - ススフナン家とマンク・ヌゴロ家
オランダ東インド会社'>オランダ東インド会社
オランダ領東インド'>オランダ領東インド
インドネシアの歴史'>インドネシアの歴史
ヒンドゥー教'>ヒンドゥー教

外部リンク

王国（インドネシア歴史散歩'>マタラーム王国（インドネシア歴史散歩))
ジョグジャカルタ王宮の写真 - ウェイバックマシン（2016年3月4日アーカイブ分）
* ジョグジャカルタの地図 - ウェイバックマシン（2015年5月10日アーカイブ分）

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