ジャン・ド・デュノワ

ジャン・ド・デュノワ：百年戦争を駆け抜けたフランスの英雄

ジャン・ド・デュノワ（1402年 - 1468年）は、百年戦争期のフランスで活躍した名将です。オルレアン公ルイと愛人との間に生まれた私生子でしたが、その出自を跳ね返すかのように、フランスの独立と発展に大きく貢献しました。

激動の生い立ちと百年戦争への参戦

1402年、オルレアン公ルイと愛人マリエット・ダンギャンの子として生まれたジャンは、幼少期から運命の波に翻弄されます。1407年、父ルイが暗殺されると、異母兄シャルルがオルレアン公位を継ぎましたが、アジャンクールの戦いでイングランド軍の捕虜となります。ジャン自身も、フランスの内乱に巻き込まれ、ブルゴーニュ派に捕らえられるなど、困難な状況に置かれました。

しかし、これらの経験はジャンを強くし、優れた軍事才能を開花させる契機となります。1421年のボージェの戦いでは、イングランド軍を撃破し、騎士の称号を授与されました。その後も、数々の戦いで活躍し、フランス軍の勝利に貢献していきました。特に、1427年のモンタルジ包囲戦での活躍は注目に値します。

ジャンヌ・ダルクとの出会い

1428年10月、オルレアン包囲戦の総司令官に任命されたジャンは、オルレアンの街を守るため奮闘します。戦況は膠着し、1429年2月にはニシンの戦いで敗北を喫するなど、厳しい状況が続きます。

そんな中、ジャンヌ・ダルクがオルレアンに入城します。ジャンヌの出現は、フランス軍に大きな勇気を与えました。ジャンとジャンヌは協力し、オルレアン包囲戦を勝利に導きます。その後も、パテーの戦いなど数々の戦いで共闘し、フランスの勝利に大きく貢献しました。ジャンヌの死後も、ジャンは彼女の遺志を受け継ぎ、フランスのために戦い続けます。

王室との確執と和解

シャルル7世による中央集権化政策に反対し、反乱を起こした時期もありました。しかし、リッシュモン大元帥によって鎮圧されると、再びシャルル7世に仕えるようになります。その後も、対立教皇との交渉やノルマンディーの征服など、重要な任務を任され、フランスの独立に貢献し続けました。

百年戦争終結後も、ジャンは政治的な活動に携わり、アランソン公の逮捕や公益同盟への参加など、波乱に満ちた日々を送りました。晩年はルイ11世と和解し、オルレアン＝ロングヴィル家の地位を確立しました。1468年、66歳で生涯を終えました。

功績と評価

ジャン・ド・デュノワは、私生子という出自にもかかわらず、卓越した軍事才能と政治手腕で、百年戦争におけるフランスの勝利に大きく貢献しました。ジャンヌ・ダルクと共にフランスを救った英雄として、フランスの歴史に名を残す人物です。彼の生涯は、困難に立ち向かい、自らの信念を貫き通すことの大切さを教えてくれます。

参考文献

ジャン＝ポール・エチュヴェリー著、大谷暢順訳『百年戦争とリッシュモン大元帥』河出書房新社、1991年
レジーヌ＝ペルヌー、マリ＝ヴェロニック・クラン著、福本直之訳『ジャンヌ・ダルク』東京書籍、1992年
樋口淳『フランスをつくった王 ~シャルル七世年代記~』悠書館、2011年
佐藤賢一『ヴァロワ朝 フランス王朝史2』講談社（講談社現代新書）、2014年

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