ジャン＝バティスト・コルベール (トルシー侯)

トルシー侯ジャン＝バティスト・コルベールの生涯と業績

ジャン＝バティスト・コルベール（トルシー侯）は1665年9月14日に生まれ、1746年9月2日に亡くなったブルボン朝フランスの重要な政治家および外交官です。彼はフランス王ルイ14世に仕え、特に治世の後期において外交の重要な役割を担いました。コルベールは外務大臣シャルル・コルベール・ド・クロワシーを父に持ち、財務総監だったジャン＝バティスト・コルベールの伯父および、海軍大臣セニュレー侯が従 cousinとなる非常に著名な家系に生まれ育ちました。

彼の外務省でのキャリアは1689年に始まり、1696年には外務大臣に就任しました。彼は、その後の大同盟戦争における終戦交渉に深く関与しました。特に1697年に締結されたレイスウェイク条約に尽力し、これは彼の外交的手腕が光る瞬間の一つです。また、彼は1698年にイングランドとスペイン領土の分割に関する交渉を行い、これが1700年の条約へと結実しますが、当時のスペイン王カルロス2世はこの条約を受け入れず、精力的に行った交渉は徒労に終わります。

カルロス2世の死後、ルイ14世の孫であるフィリップ（後のフェリペ5世）がスペイン王位を相続しますが、これに不満を覚えた諸国がフランスと衝突し、スペイン継承戦争が勃発します。この戦争の最中、フランスは初め劣勢に立たされ、1709年には同盟国との和睦交渉に乗り出しますが、その交渉は決裂します。その後、コルベールはイギリスの野党トーリー党指導者ロバート・ハーレーらとの秘密交渉を試み、1710年からは元駐仏大使であるジャージー伯エドワード・ヴィリアーズとの交渉が始まります。

しかし、1711年にジャージー伯が急死した後、コルベールは国務大臣ヘンリー・シンジョンと共に和平へと導く努力を続け、ついに1712年にはイギリス・フランス間の単独講和が実現し、1713年にはシュルーズベリー公チャールズ・タルボットとの交渉を重ねてユトレヒト条約を成立させます。これらの成果は彼の外交戦略の総決算であり、戦争の終結に大きく寄与しました。

ルイ14世の死後、ルイ15世が即位するとコルベールは辞任し、静かな引退生活を送りました。1715年にはパリのフォーブル・サントノーレ通りに邸宅を購入し、オテル・ド・トルシーと名付けられることとなります。また同年にはサブレ＝シュル＝サルトにサブレ城を建設し、1712年には外交官の訓練学校を設立するなど、後進の育成に力を注ぎました。これらの学校は1720年には閉鎖となりますが、彼の影響は後の世に受け継がれることとなります。

生涯を通じて、コルベールは多くの文芸サロンに出入りし、ルイ14世の庶子であるメーヌ公の妻ルイーズ・ベネディクトが設立した蜜蜂騎士団のメンバーにも選ばれるなど、社交界でも存在感を示しました。1746年、80歳にして生涯を閉じる彼の活動は、回想録を通じて後世に語り継がれ、著名な哲学者ヴォルテールは『ルイ十四世の世紀』において彼を誠実で正直な人物として評価しました。コルベールの生涯と業績は、その時代のフランスを形作る上で欠かせないものであり、今日でも多くの人々によって記憶されています。

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