ジャン＝フランソワ・パイヤール

ジャン＝フランソワ・パイヤール（Jean-François Paillard, 1928年4月12日 - 2013年4月15日）は、フランスの著名な指揮者であり、音楽学者、著述家としてもその才能を発揮しました。彼はマルヌ県ヴィトリ＝ル＝フランソワで生まれ、ソルボンヌ大学で数学を専攻した後、音楽の道へと進みました。パリ音楽院ではノルベール・デュフルクに音楽学を、ザルツブルクのモーツァルテウム音楽大学ではイーゴリ・マルケヴィチに指揮法を師事し、音楽家としての基礎を築きました。

1953年、パイヤールはジャン＝マリー・ルクレール器楽アンサンブルを創設し、これが後のパイヤール室内管弦楽団（1959年結成）へと発展しました。このオーケストラはバロック音楽と古典派音楽を専門としていましたが、時折、チャイコフスキーやドヴォルザークの弦楽セレナーデといったロマン派の作品も取り上げました。パイヤールは、特にバロック音楽の分野でエラート・レーベルに数多くの録音を行い、ヨーロッパやアメリカ各地で演奏旅行を実施しました。これらの活動を通じて、彼は国際的な評価を確立しました。

パイヤール室内管弦楽団との共演者には、モーリス・アンドレ（トランペット）、ジャン＝ピエール・ランパル（フルート）、ジェラール・ジャリ（ヴァイオリン）、リリー・ラスキーヌ（ハープ）、ピエール・ピエルロ（オーボエ）、ジャック・ランスロ（クラリネット）といった名だたるソリストたちが名を連ねています。また、チェンバロ奏者のアンヌ＝マリー・ベッケンシュタイナーは、パイヤールの夫人でした。

パイヤールは、自らのオーケストラ活動に加えて、客演指揮者としても様々なアンサンブルを指揮しました。また、彼は音楽に関する著作活動も積極的に行い、叢書『Archives de la Musique Instrumentale』の校訂者も務めました。1960年には、著書『フランス古典音楽 La musique française classique』（渡部和夫訳、白水社クセジュ文庫）を出版し、フランス音楽に関する深い知識と洞察力を示しました。この著書は、フランス音楽史における重要な参考文献として広く読まれています。

日本へは1968年10月に初来日し、その際のライブ録音は「東京のパイヤール」というCDでリリースされています。その後も、彼はたびたび日本を訪れており、2001年には水戸室内管弦楽団を指揮し、ドビュッシー、ファリャ、オネゲルの作品を演奏しました。パイヤールの音楽に対する情熱と卓越した才能は、多くの人々に感銘を与え、彼の遺産は今もなお多くの音楽ファンに愛されています。

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