ジャーマースプ

ジャーマースプ：短期間の統治とその後

ジャーマースプ（在位: 496年 - 498/499年）は、サーサーン朝の君主の一人です。彼はペーローズ1世の子であり、カワード1世の弟にあたります。カワード1世が貴族と聖職者によって廃位された後、王位に迎えられました。

名前について

ジャーマースプという名前は、カヤーン朝の君主ヴィシュタスパの大臣に由来します。これは、当時のサーサーン朝の人々がカヤーン朝の歴史に関心を寄せていたことを示唆しています。ジャーマースプの名前は、ギリシア語で Zamásphēs、アラビア語で Jāmāsb, Zāmāsb, Zāmāsf、新ペルシア語で Jāmāsp もしくは Zāmāsp と訳されます。

即位までの背景

484年、ペーローズ1世がエフタルとの戦いで命を落としました。この戦いでサーサーン朝の軍は打ち破られ、多くの王子や貴族も戦死しました。戦後、ホラーサーンの主要都市がエフタルの支配下に入りました。しかし、スフラという貴族が軍を再編し、エフタルによる更なる侵攻を阻止。ペーローズ1世の兄弟であるバラーシュが王位に就きましたが、貴族と聖職者の不評により、4年後には退位させられました。その後、スフラはカワード1世を新たな王として擁立しました。

治世と退位

496年、カワード1世が社会経済的・宗教的な方針を転換したことが原因で、貴族とゾロアスター教の聖職者が反発し、カワード1世を廃位。代わりに、彼らはより扱いやすいと考えたジャーマースプを王位に据えました。カワード1世はフーゼスターンの監獄に投獄されましたが、脱獄に成功し、エフタルの領内へ逃れました。

498年（または499年）、カワード1世はエフタルの軍隊を率いてペルシアに戻り、王位奪還を目指しました。貴族や聖職者は内戦を望まなかったため、抵抗せずにカワード1世の復位を受け入れました。ジャーマースプは危害を加えられることなく、退位しました。

退位後

退位後、ジャーマースプはアルメニアへ移り、ハザールを破って領土の一部を征服。アルメニアの女性と結婚し、ナルシーという息子をもうけました。

子孫

ジャーマースプの息子ナルシーは、ギーラーンを含む一族の領地を拡大。ナルシーの息子ピールーズはギーラーンの王女と結婚し、ギール・ガーヴバーラという息子をもうけました。ギール・ガーヴバーラは後にダーブーイド朝の祖となり、その子孫はタバリスタンの地方政権であるパードゥースパーン朝を開きました。

ジャーマースプの短い統治は、サーサーン朝の混乱期を象徴しています。彼の退位とカワード1世の復位は、当時の政治情勢の不安定さを示しており、小規模な軍事力でもって貴族や聖職者の結束を打ち破ることが可能であったことを物語っています。

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