ハザール

ハザール・カガン国の概要

ハザール・カガン国は、約7世紀から10世紀にかけてカスピ海北部やコーカサス、黒海沿岸を中心に栄えた遊牧民族による国家です。支配者層はテュルク系民族で、9世紀頃にユダヤ教に改宗したことが知られています。この改宗の影響は、討論を呼ぶ重要な歴史的事件となりました。

起源と歴史

ハザールの起源ははっきりしていませんが、テュルク系民族と考えられています。中国の歴史書『旧唐書』や『新唐書』にはハザールを指す記述があり、また、中世の時代を記したテオファネスによれば、ハザールはベルシリアの出身とされています。また、ハザール人たちはサビルと呼ばれ、フン族の一部であったとも考えられています。

西突厥の影響

6世紀末、ハザールはカスピ海沿岸とカフカス地域に進出しましたが、この時は西突厥に従属していました。626年には東ローマ帝国との同盟が形成され、ハザールはペルシアに対する戦争で重要な役割を果たしました。7世紀中頃、西突厥が衰退すると、ハザールは独立し、ハザール・カガン国を成立させます。

イスラームとの関係

ハザールはかつてサーサーン朝ペルシアと争っていましたが、651年にサーサーン朝がイスラームに滅ぼされると、ハザールは新興のイスラム共同体と対立することになります。735年、ハザールはウマイヤ朝軍に一時的に敗れ、イスラム教に改宗しました。しかし、799年には再びユダヤ教を公的に受け入れます。

経済と文化

商業の活動はハザールの繁栄の重要な要素であり、バルト海からカスピ海にかけての交易路は、彼らの経済を支える魅力的な要素でした。ハザールは毛皮や奴隷を交易し、さまざまな民族間での商業ネットワークを形成しました。また、多神教的信仰からユダヤ教への改宗は、他の宗教に対しても寛容であった彼らの宗教観を反映しています。

政治体制

ハザール・カガン国は、かつてはカガンが権力の頂点に立っていましたが、次第にその地位は名目上のものとなり、ベク（実質的な支配者）との二重王権制へと移行しました。10世紀の初頭には、内乱が起こり、カガンの権限はさらに制限されることとなります。

文化的影響

ハザールは彼らが位置する地域で、特にイスラム化の進行を防ぐ役割を果たしました。彼らが存在していたことは、はるかに広がりつつあったイスラム文化から地域を守る要因となったのです。そのため、ハザール国の歴史は、周辺の民族や国家に多大な影響を与えることについて特筆すべきものがあります。

ハザールの滅亡

10世紀になると、ハザール・カガン国は外敵の脅威や内紛により衰退し、965年にキエフ・ルーシのスヴャトスラフ1世による遠征でついに崩壊を迎えました。

このように、ハザール・カガン国はその独自性と歴史的役割から、今なお研究の対象とされています。

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