ジュエルズ (バレエ)

「ジュエルズ」は、ジョージ・バランシンがニューヨーク・シティ・バレエ団（NYCB）のために創作した、全3幕からなるバレエ作品です。1967年4月13日にニューヨーク州立劇場で初演され、舞台装置はピーター・ハーベイ、照明はロナルド・ベイツが担当しました。本作は、ストーリーを持たない抽象バレエとして知られています。

構成と音楽

「ジュエルズ」は、「エメラルド」「ルビー」「ダイヤモンド」の3幕で構成されており、それぞれの宝石の色を基調とした衣装が特徴です。バランシン自身は、このバレエが宝石そのものと直接的な関係があるわけではなく、ダンサーが宝石のような衣装を身につけているだけだと述べています。各幕はそれぞれ異なる作曲家の音楽を使用しており、「エメラルド」はガブリエル・フォーレ、「ルビー」はイーゴリ・ストラヴィンスキー、「ダイヤモンド」はピョートル・チャイコフスキーの楽曲が用いられています。

エメラルド: フォーレの「ペレアスとメリザンド」や「シャイロック」からの抜粋を使用。約31分の演奏時間。
ルビー: ストラヴィンスキーの「カプリッチョ」を使用。約19分の演奏時間。
ダイヤモンド: チャイコフスキーの「交響曲第3番」から第2、3、4、5楽章を使用。約31分の演奏時間。

衣装

衣装は、バランシンと長年協働してきたバーバラ・カリンスカが担当しました。各幕で異なるデザインが用いられており、「エメラルド」ではロマンティックな七分丈のチュールのスカート、「ルビー」では男女ともに腰でフレアさせた衣装、「ダイヤモンド」ではロシア帝室バレエのクラシック・チュチュが用いられました。カリンスカの衣装は、その精巧な美しさから美術館や劇場のロビーに展示されることもあります。ヴァンクリーフ&アーペルのクロード・アーペルは、バランシンに宝石を題材にすることを提案した人物ですが、カリンスカの衣装のトリムが宝石の輝きを見事に再現していることに感銘を受けたと伝えられています。カリンスカは、衣装の耐久性やダンサーの動きやすさにも配慮しており、デザイン、針遣い、布地の選定に細心の注意を払っています。

初演キャスト

1967年の初演では、「エメラルド」でミミ・ポールがシシリエンヌのヴァリアシオンとノクターンのパ・ド・ドゥを踊りました。彼女は後にこのパートを指導するようになり、サラ・マーンズもその指導を受けています。

エメラルド: ヴィオレット・ヴェルディ、ミミ・ポール、サラ・リーランド、スキ・ショーラーなど。
ルビー: パトリシア・マクブライド、パトリシア・ニアリーなど。
ダイヤモンド: スザンヌ・ファレル、ジャック・ダンボワーズなど。

受賞

2008年、ロイヤル・バレエ団がコヴェント・ガーデンのロイヤル・オペラ・ハウスで上演した「ジュエルズ」は、ローレンス・オリヴィエ賞を受賞しました。この公演は同団における全幕初演であり、最優秀新作ダンス公演賞とダンス部門業績賞に選出されました。ローレンス・オリヴィエ賞は、イギリスにおける舞台芸術で最も権威のある賞であり、ブロードウェイのトニー賞に相当します。

映像作品

「ジュエルズ」は、パリ・オペラ座バレエ、ニューヨーク・シティ・バレエ団、マリインスキー・バレエなど、様々なバレエ団によって映像化されています。これらの映像作品を通じて、世界中の人々が「ジュエルズ」の魅力に触れることができます。

まとめ

「ジュエルズ」は、宝石をテーマにした美しい衣装、各幕で異なる音楽、そしてダンサーたちの卓越した技術が融合した、ジョージ・バランシンの傑作として、今もなお世界中で愛され続けています。

もう一度検索