パ・ド・ドゥ

パ・ド・ドゥ（仏：Pas de deux）は、「2人のステップ」を意味し、バレエ作品において男女2人のダンサーによって踊られる特別な踊りです。バレエの中でも最も華やかで感動的な見せ場として知られています。

同性同士で踊る場合は「デュエット」と呼ばれ、パ・ド・ドゥとは区別されます。東洋の舞踊では女性が一人で踊ることが多いのに対し、男女が共に踊るパ・ド・ドゥは西洋特有の文化であり、「愛」の象徴とも解釈されています。

歴史

パ・ド・ドゥは、「2人の役者によるアントレ（ヴァリアシオン）」を起源とし、18世紀頃から用語として使用されるようになりました。1717年にはイギリスでパ・ド・ドゥが作られた記録が残っていますが、当時は男女が横に並んで同じステップを踏み、時折手を合わせる程度のシンプルなものでした。

19世紀に入り、ロマンティック・バレエが発展するにつれて、パ・ド・ドゥの内容も大きく進化しました。ポワントの技術が確立され、衣装が厚手から薄手へと変化し、ダンサーの身体のラインがより美しく表現されるようになると、男性がバレリーナを支えるアラベスクや、持ち上げるリフト（アンレヴマン）などの高度なテクニックが取り入れられるようになりました。

マリウス・プティパ（1818 - 1910）は、パ・ド・ドゥを完全に定式化した人物として知られています。彼は、ピルエット（回転）、空中で静止するポーズ、高く持ち上げるハイ・リフトなどを導入し、『くるみ割り人形』（1892年）や『白鳥の湖』（1895年）などの作品に組み込み、パ・ド・ドゥの人気を不動のものとしました。

20世紀に入ると、ミハイル・フォーキンやジョージ・バランシンといった振付家によって、より大胆で躍動感あふれるパ・ド・ドゥが創作されるようになりました。

グラン・パ・ド・ドゥ

マリウス・プティパが定式化した4つのパートから構成されるパ・ド・ドゥは、特にグラン・パ・ド・ドゥ（Grand Pas de Deux）と呼ばれます。グラン・パ・ド・ドゥは、以下の順序で進行するのが一般的です。

1. アントレ（Entrée）: 2人のダンサーが登場します。
2. アダージュ（Adage）: 男女2人で踊ります。ゆっくりとした音楽に合わせて、バレリーナが男性に支えられながら、優雅な線とバランスを表現します。「緩徐」とも呼ばれます。
3. ヴァリエーション（Variation）: 男性ダンサーが1人で踊ります。速いテンポで、高く跳躍するなどの男性的な動きが特徴です。
4. ヴァリエーション（Variation）: 女性ダンサーが1人で踊ります。柔らかく、女性らしい動きを見せます。
5. コーダ（Coda）: 男女2人で踊ります。アダージュとは対照的に、テンポの速い激しい音楽に合わせて、2人が高度なテクニックを披露します。

各パートにはそれぞれ異なる音楽が使用されます。アントレには音楽がある場合（『眠れる森の美女』第3幕）と、ない場合（『くるみ割り人形』第2幕）があります。音楽がない場合は、前の曲が終わったタイミングで登場します。

上記の構成はあくまで原則であり、作品によっては他のソリストが登場するなどの例外もあります（『パキータ』など）。グラン・パ・ド・ドゥは、バレエの華やかさと優雅さを最も劇的に表現するものであり、20世紀以降に創作されたバレエ作品でも、この構成を部分的に取り入れているものが多く見られます。

参考文献

* International Encyclopedia of Dance, 2003, pp.105-108 ISBN 0195173694

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