ジュダ・ベンジャミン

ジュダ・フィリップ・ベンジャミンの生涯

ジュダ・フィリップ・ベンジャミン（Judah Philip Benjamin, 1811年8月6日 - 1884年5月6日）は、イギリスおよびアメリカ合衆国の政治家であり、弁護士としても卓越した才能を発揮しました。彼は、ルイジアナ州の下院議員とアメリカ合衆国上院議員を務め、南北戦争中にはアメリカ連合国で司法長官、陸軍長官、国務長官という3つの閣僚ポストを歴任しました。南北戦争終結後は、イングランドで法廷弁護士として高い評価を得て、王室顧問弁護士にも任命されました。

青年期

1811年、ベンジャミンはデンマーク領西インド諸島（現在のアメリカ領ヴァージン諸島）のセント・クロイ島で、イギリス国民として誕生しました。彼の両親、フィリップ・ベンジャミンとレベッカ・デ・メンデスは共にセファルディムでした。数年後、家族と共にアメリカ合衆国に移住し、ノースカロライナ州とサウスカロライナ州で成長しました。彼はノースカロライナ州のフェーエットビル学園を経て1825年にイェール大学に入学しましたが、間もなく退学しています。1832年にはルイジアナ州ニューオーリンズに移り、法律の勉強を続け、同年に弁護士としての認可を受けました。その後、商法専門の弁護士として開業しました。

1833年、ベンジャミンはニューオーリンズの著名なクリオーリョの家系の娘、ナタリー・セント・マーティンと結婚しましたが、この結婚は政略的なものであり、幸福なものではありませんでした。ルイジアナ州ベレ・シャッセで奴隷所有主となり、砂糖農園を経営し、弁護士業と合わせて大きな財産を築きました。1842年には、ナタリーとの間に唯一の子、ニネットをもうけましたが、ナタリーは間もなくニネットを連れてフランスのパリへ移住しました。また、同年にはホイッグ党の党員としてルイジアナ州下院議員に選出され、1845年には州の憲法制定会議の委員としても活動しました。1850年、ベンジャミンは所有していた150人の奴隷を農園とともに売却し、その後は奴隷を所有することはありませんでした。

上院議員

ルイジアナ州下院議員として、ベンジャミンは法律に関する深い知識と説得力のある発言で注目を集めました。その活躍により、1852年には州議会から連邦議会の上院議員に選出されました。また、ミラード・フィルモア大統領は、ジョン・マッキンリーの死去によって空席となった連邦最高裁判所の陪席裁判官のポストにベンジャミンを推薦する意向を示しましたが、彼はこれを辞退しました。1853年3月4日、予定通り連邦議会の上院議員として着任しました。就任初年度には、同じく40代の上院議員ジェファーソン・デイヴィスと議場で侮辱的な言動をめぐって争いましたが、デイヴィスが謝罪したことで和解し、その後二人は親密な関係となりました。

ベンジャミンは上院議員としてもその弁舌の巧みさで高い評価を得ました。1854年、フランクリン・ピアーズ大統領も彼を最高裁判所の陪席裁判官に指名しましたが、彼は再びこれを辞退しました。1859年、民主党から再び上院議員に選出され、第34回から第36回まで務めた後、ルイジアナ州の合衆国離脱に伴い1861年2月4日に上院議員を辞職しました。

南部連合

1861年2月25日、連合国臨時議会で初代大統領に選出されたジェファーソン・デイヴィスは、ベンジャミンを司法長官に指名しました。デイヴィスはベンジャミンのことを「非常に評判の良い弁護士であり、上院では明晰な判断力、規律正しい習慣、職務遂行力を発揮していた。彼の有能さは、私に大きな感銘を与えた」と高く評価しました。南部連合においてもベンジャミンは「連合国の頭脳」と称され、その才能を遺憾なく発揮しました。

南北戦争が激化する中、1861年9月にベンジャミンは司法長官を退任し、陸軍長官代行に就任しました。同年11月には正式に陸軍長官として承認を受けました。しかし、連合国の軍事情勢に対する民衆の批判の矢面に立ち、ピエール・ボーレガードやトマス・ジャクソンなどの将軍たちと対立することがありました。1862年2月、連合国がロアノーク島を失った際には、民衆からの批判が頂点に達しました。ベンジャミンは、人員不足が原因であったロアノーク島の防衛放棄を公表せず、議会の非難決議を受け入れ、陸軍長官を辞任しました。その後、1863年3月には、デイヴィス大統領によって国務長官に任命されました。

ベンジャミンの国務長官としての主な任務は、イギリスを連合国の味方につけることでした。1864年、連合国の戦況が絶望的になると、ベンジャミンは奴隷を兵役に就かせるという大胆な計画を提案しました。この計画は奴隷制を嫌うイギリスの世論を和らげ、兵力不足を補うものでもありましたが、保守派の強い反対にあい、リッチモンドが陥落した1865年4月にようやく議会を通過しました。しかし、実際に解放されて連合国の兵士となった奴隷は一人もいませんでした。

亡命

南北戦争終結直後、エイブラハム・リンカーン大統領の暗殺事件にベンジャミンが関与しているという噂が広まり、公正な裁判を受けられないと判断したベンジャミンは、書類を燃やして偽名でイングランドに逃亡しました。

1866年6月、イングランドで弁護士の資格を取得し、新たな人生をスタートさせました。ベンジャミンは法廷弁護士として成功を収め、高い収入を得ました。1868年には「Treatise on the Law of Sale of Personal Property（動産売却の法律に関する論文）」を発表し、この論文は後にイギリスの私法、特に商法に関する古典の一つとして評価され、現在では「Benjamin's Sale of Goods（ベンジャミン：財の売却）」として入手可能です。1872年には、弁護士としての能力を高く評価され、王室顧問弁護士に任命されました。

1884年5月、ベンジャミンはフランスのパリで亡くなりました。彼はフィリップ・バンジャマンという名前でパリのペール・ラシェーズ墓地に埋葬されました。

参考文献

Jon L. Wakelyn: Biographical Dictionary of the Confederacy Louisiana State University Press, Baton Rouge ISBN 0-8071-0092-7
The Civil War Almanac World Almanac Publications, New York, NY ISBN 0-911818-36-7
Rembert W. Patrick: Jefferson Davis and his cabinet Louisiana State University Press, Baton Rouge, 1944

外部リンク

United States Congress. "ジュダ・ベンジャミン (id: B000365)". Biographical Directory of the United States Congress (英語).

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